音楽

梶浦由記  永遠(とこしえ)の恋物語

 最近、梶浦由記さんの曲を聞きながら「この人の曲はとてもトランスサタニアンっぽいなぁ……」的なことを感じたので、それについて書いてみます。

 まず、梶浦さんの代表曲(だと個人的に思っている作品)は何の天体がトランスサタニアンと絡んでいるかがすごく感じやすいと思っているので、梶浦さんの曲でトランスサタニアンのアスペクトをあらわしてみます。

Magia:月冥王星  たぶんハード(0・90・180っぽい)

 もはや前奏の音からしてそれっぽい&歌詞もどこまでも冥王星的。どろどろ黒くてぞわぞわする感じは勝手なイメージだけどハードの重さです。

いつか君が瞳に灯す愛の光が
時を超えて
滅び急ぐ世界の夢を
確かに一つ壊すだろう

躊躇いを飲み干して
君が望むモノは何?
こんな欲深い憧れの行方に
儚い明日はあるの?

いつか君も誰かの為に
強い力を望むのだろう
愛が胸を捉えた夜に
未知の言葉が生まれて来る

迷わずに行けるなら
心が砕けてもいいわ
いつも目の前の哀しみに
立ち向かう為の
呪文が欲しい

 歌詞の引用は不規則だけど、もはや重すぎる愛(執着と紙一重)・欲深い憧れ(desire)・誰かの為に強い力(月冥王星ハードは支配的・執着的な愛みたいな解釈になることもあるような……)・迷わずに行けるなら心が砕けてもいいわ(月冥王星合っぽい強さと悲しさ)みたいなのが何重にも書かれています。

destination unknown:金星天王星ハード

 これはどちらかというとトランジット・ソーラーアークで天王星が金星に巡ってきたみたいな感じかも。この刺激的な音は、自分でも何が起こっているかわからない感じからして90 or 180みたいな印象だったり。

夢を語りすぎて
命が軽くなりそうで
この水は何処へ続く
流れを恋い慕っていた

みたいな歌詞は海王星も少し絡んでいるけど、後に挙げる金星&海王星系の陶酔的な曲に比べるとどことなく刺戟の強さが目立っているところが天王星っぽいような気がするというか、海王星は陶酔・沈淪、天王星は霹靂(空を裂くような雷霆)・搔き乱される落ち着かなさみたいな感じです。

neverending:金星海王星

 これも前奏のぼんやり流れ込んでくる音が海王星っぽいなぁ……みたいに思ったり、どこまでも幻影をみているまま書かれた歌詞なんて海王星らしさの塊みたいな曲です。

探したいものを探し
哀しみを甘く求め
この胸は切なさへと
いつも帰って行くんだろう

カンテラが
夜の海にただ淡く弧を描いて
もういない人を
未来の光のように照らす

「カンテラが夜の海にただ淡く弧を描いて」なんて金星海王星の風景そのものというか、夢見すぎ&美化しすぎアスペクトの詩です(こういう感性どこまでも憧れる……)。「甘い(金星)哀しみ(海王星)」という質感が金星海王星っぽいかもです(強いて云うなら合・ハードっぽいかも)

光の旋律:太陽海王星(どちらかというと合ソフト)

 めずらしくソフトアスペクトっぽい曲です。どこまでも美しい理想に満ちている(太陽海王星は理想主義アスペクト。ハードだとちょっと無謀味が加わる)し、音から浮かんでくる色も明るいというかきらきらした光(太陽の耀きに海王星のキラキラ感が上乗せされているような雰囲気)みたいな感じがあります。

この空の輝き
君の胸に届いてる?
夢見てた調べは静けさのように

君の手がまだ夢に遠くても
思い出してよ 優しい声を
誰かが君のため 歌った幸福(しあわせ)の和音(コード)

空の音響け、高く哀しみを超えて
君の目に映るものは全て本当の世界
涙さえ君をここに留めておけない
降り注ぐ光の中 明日を奏でて

 海王星は魚座(どこまでも広がる共感)のルーラーだけど、「この空の輝き  君の胸に届いてる?」「誰かが君のため 歌った幸福の和音(コード)」って、誰かの生き方がふわりと広がって海王星(魚座)的に人々に届いていくような様子っぽいです。

intermezzo:月海王星(合orハード)

 この自己憐憫・自己欺瞞的な歌詞はどこまでも月海王星ハードっぽいです。

https://youtu.be/n2UjD0tpYhM?si=Y2kN1qrdjj95xtT_

幸せごっこ嫌いじゃないよ
なみだがでる

 よく月海王星ハードは人のことを気にしすぎて自己欺瞞と自己憐憫に陥りながら、それを抜け出すこともできず、その感情すら美化しがちで……みたいに書かれるけど、これはどこまでもそれっぽい歌詞です。

今はね
すこし心がぽかり
喜劇の幕間(まくま)には
甘いお菓子を食べよう

 これも一種の自己欺瞞みたいな味わいのある気がします。どうにもならないほど気分が沈んでいるのに、人のことを気にして誤魔化すように過ごす感じというか……。

storia:金星土星海王星(たぶんソフト)

 これはたぶんメディエーションみたいな感じの複合アスペクトだと思います。この滑らかな雰囲気と古めかしいような艶めきは、金星のキラキラ感・土星の荘重さ・海王星の幻想に酔わせる感じの混ざり合いです(たぶん)。

秘密の黄昏に
君の手を取った
古のバラード
繰り返すように紡ぐ
romance of life

水の中沈んで行った
懐かしい恋の物語
光と影の中から
愛しさは生まれて
還る

 金星海王星アスペクトは幻想的すぎる夢見アスペクトみたいに云われるけど、さらに古さ(古のバラード)・憂い(水の中沈んで行った懐かしい恋の物語)の土星も入っていて、さらに「水の中沈んで行った懐かしい恋の物語」って金星(恋の物語)・海王星(水の中沈んで行った懐かしい)っぽさもあって……みたいに盛り込みすぎなくらいです。

 金星だけだと目にみえる・お金で買える楽しみみたいな意味になりがちですが、そこに海王星が混ざってくると感情的に憑り移られたような興奮みたいな意味になりそうで、土星の壓えを外されて湧き上がる想い、みたいな歌詞です。

(どうでもいいけど、この曲の元になった曲造語詞の最後が「ia/oa」の音で終わることが多いのは狭い桎梏から抜け出す感じを音で作っているのかも。長い間抑えられてきた美しい幻想と想いが隠れていたのを思い出すみたいな。元の曲は土星海王星ソフトの美しくて古い嘘みたいな雰囲気)

黄昏の海:金星土星海王星(ハード)

 個人的な感覚だけど、この曲と「storia」は質感がかなり似ていると思います。強いていうなら「黄昏の海」はハードアスペクトで物悲しさが溢れていて、やや硬い混ざり方というか、「storia」の滑らかさとは少し違うみたいな印象です。

 それでも土星(重々しさ・現実)に切り裂かれる金星海王星の幻想的恋物語みたいな雰囲気は似ています。

黄昏の海に出て
二人は二度ともう巡り会えないの……

黄昏だけを抱いて
あの日の波はもう深い海の底
哀しみを知らない蒼い夢を見て眠っている

永遠(とこしえ)の恋物語

 ……という感じで梶浦由記さんの作品でアスペクトを喩えてみたのですが、ここまで来ると梶浦さんのホロスコープも読んでみたいと思ったので載せておきます。

 ……作品からしてトランスサタニアン味を感じると思っていたけど、予想以上に濃いというかすごいですね。まず、特に目立つのは金星・天王星・冥王星の三重合と、それを含めた土星・海王星のメディエーションです。そして、144度が二本あって、土星・キロン合も気になります。

(この時期のリーディングは下手すぎてあれなので、もっと上手く読めている方を貼っておきます。久しぶりに読み返して、下手過ぎてビビってる笑)

ハウスが分からないホロスコープ  占いやっている人あるあるとして、こんな展開ありますよね(上手い人は関係ないのかもですが……笑) 友達or知り合い「趣味って何...

 まず、先に挙げた代表曲をみていくと思うのが、どれも「特別な二人だけの世界にいる私たち」という雰囲気が通じていると思います。サビアンシンボルでみていくと

金星:乙女座14度  家系図
   or乙女座15度  装飾されたハンカチーフ
天王星:乙女座14度  家系図
冥王星:乙女座15度  装飾されたハンカチーフ

のようになっていて、金星は出生時間によって変わるのでどちらも有り得るけど、家系図のサビアンは乙女座の閉ざされた関係の中で安定させる様子、装飾されたハンカチーフは家系図のような閉ざされた安定の中で汚れのない美しさをもつというイメージです。なので、この金星は乙女座にあってフォール(物としての装飾性は削がれる)だけど、外から混ざってくるものを嫌がって気品を保ちたい乙女座、みたいな意味になると思います。

 さらに、天王星も乙女座14度だとすると、乙女座天王星ってイメージが難しいのですが、天王星の“切り出す(天王星的な突出)”が乙女座14度的な閉ざされた関係として起こるみたいに読んでみると「二人は二度ともう巡り会えないの」みたいな二人しかいない世界みたいになりそうです。

 冥王星の乙女座15度も汚れの入ることを嫌う乙女座らしさだとすると、冥王星は内に秘めた執着みたいな感じで出ているとすれば、「永遠に壊れず穢れることのない私たち(秘密の黄昏に君の手を取った 古のバラード 繰り返すように紡ぐ)」という意味になるのかもです(金星冥王星アスペクトはストーカー化しやすいみたいな解釈も似たような理由からの派生だと思う)。

 数千年にわたって滅びない私たちの魂は“君のことをいつも歌いたい 悲しい夜を温もりで満たして……君の囁きで始まるよ 永久のstoria”という、この世から切り離されて“ヒナギクが咲いて、白い月が輝いて”いた中にいる私たちの物語という世界観だと思います。

 さらに気になるのは土星とキロンの合なのですが、まずはキロンから読んでいきます。

土星:魚座17度  復活祭の歩道
キロン:魚座21度  シナイ山から新しい法則を持ち降りてくる男

 ところで、梶浦さんの曲はこんなにもトランスサタニアン的な運命感に満ちているのに、どこまでも“二人は二度ともう巡り会えない”的な世界を書いています。これは魚座22度のサビアンが魚座的なもの(みえない神秘に流されて生きること)に法則を与える様子だとすれば、人間はどこまでもそういう魚座的な神秘と溶けあう感情の不思議さを知り得ないまま生きていくときに感じる傷つき(どんなに波を重ねて想い出を叫んでも 貴方のいた岸辺にはもう帰らない・水の中沈んで行った懐かしい恋の物語 光と影の中から愛しさは生まれて還る)みたいなことなのかもしれないです。

 さらにそのキロンが土星と合なのですが、梶浦さんのチャートで難しいのは乙女座に天王星・冥王星、魚座に土星という「ふつう逆では?」みたいに思いたい組み合わせがあるところで、これは“乙女座的な小さい世界で生きている人たち(二人だけの世界にいる私たち)が魚座的な茫漠として霊の漂う世界をふだんは抑えたり振り回されたり(魚座土星)しているけど、時にその魚座的な深みに何があるのかわからないまま垣間みる(魚座キロン)”みたいな意味で強いて読めるかもしれなくて、なのでどことなく神秘的で民歌っぽい雰囲気(魚座の神秘と日常世界を描く乙女座)になるのかもです。

 さらに、蠍座海王星(蠍座18度  秋色の豊かな森)がメディエーションになっているのですが、この組み合わせって金星土星海王星のソフトという面では「storia」と同じです(アスペクトのイメージは結構思いつきで書いていたのですごく驚いている笑)。

 このサビアンは蠍座の第四グループなので、蠍座の執念深さに牡牛座の自己充足・安逸的な雰囲気が少し緩めるように入ってくる度数だとすると、じっとりと狭く緊り詰めていたものがふと緩む時間(秋色の豊かな森を歩くような)になって改めて深く感じる気がする、という意味かもです。ちなみにこのサビアンをみるといつもこの詩を思い出す……

  点絳唇  王国維
厚地高天、側身頗覚平生左。
小斎如舸、自許回旋可。
聊復浮生、得此須臾我。
乾坤大、霜林独坐、紅葉紛紛堕。

厚い地に天は高く、身を置けば頗る平生の軽きを覚えて、
小さな書斎は舸(舟)のようで、自ら回旋(めぐらせられる)のだけど。
聊かの復た浮生、此の須臾(ひととき)の我を得て、
乾坤(天地)は大きく、霜林に独り坐れば、紅葉は紛紛(はらはら)として堕ちるのだけど。

 この詩はたぶんですが、毒が身体に回っていくように暗く搦んだ感情と向き合うときに、他の蠍座のサビアンでは「蠍座2度  割れた瓶とこぼれた香水(秘めていた感情が流れ出てやまない)」「蠍座9度  歯科の仕事(時間をかけてでもじっくりと根から治していくように関わる)」「蠍座14度  仕事中の通信技術者(じっくりと相手との間に深い回線を作る)」「蠍座23度  妖精に変容したウサギ(性なども含めて精神的なつながりを美しいものとする)」のような方法になるのに比べて、却って牡牛座の安逸・官能(感覚の楽しみの意)によって抑えていた感情に向きあっている様子だと思ったり……。

 これが海王星のメディエーションなので、魚座17度の土星(復活祭の歩道のように、うやむやと繋がり合う感情の賑やかさが日頃抑えられているorガタガタと乱されているとき)に官能の豊かさをみたときにふと緩んで(土星の硬く緊った土に海王星の緩みが入る、という意味もある)宇宙の変化のただ中にいるような気持ちがする、みたいになりそうです。

 たとえば「storia」は時間を超えた恋物語、「Magia」は抑えられていた本来の力の目覚め、「destination unknown」は隠れていた衝動の現れなど、いずれも“未知の言葉が生まれて来る”ときの様子なのかもです。

本当は誰にも聞こえない
そんな音だった
でも誰の胸にも明るく響いてた

 この歌詞は、むしろふだんもみずから知っていたのに空の輝きをみるまで忘れていたことを書いているのかもしれないし、144度二つもそれに少し関わっている気がします。

 この144度は、72度と似た意味で5等分に関わるので、5ハウスと同じく“遊び・楽しみ・放埓さ”として組み合わさることがある天体同士にみえるアスペクトです。海王星から木星に144度、木星から火星に120度なので、火星は海王星をやや独善的に楽しむような意味でつながっているらしいです。

 さらに、火星は土星からも144度なので、蠍座海王星・魚座土星(120度でつながっている)は天秤座火星がさきに書いたメディエーションの中に含まれているような形で出てきそうです(蠍座海王星は乙女座冥王星、魚座土星は乙女座天王星にそれぞれ少し拗じ曲げられているので)。

 火星のサビアンは天秤座22度  噴水で鳥に水をやる子供(天秤座的な広いつながりを作るような積極性。火星はデトリメントなので、みずから動くよりも人のために動くような火星になる)です。

 さらに不思議なのが、火星とリリスのオーブなしの90度で、リリスは山羊座22度  敗北を優美に認める将軍(山羊座の序列の中に拘泥しないことで却って精神的な価値をもつ意、午前9時以降の生まれならこの度数)という組み合わせなので、火星(動くとき)は人のことを思っていながらも、内には精神的な価値によって高く隔てられたいという思い(リリス)がある、という意味かもしれなくて

song of love
誰もが知っていたその歌に一つ
空色の音符重ねて

一人で歌ってたときは少しだけ寂しくて
君のことずっと呼んでいた
届いたんだよね?
君の元へ

という満たされない想いと、どこへ流れていくかもわからない運命(魚座キロン)・ふだんなかなか見られないけど溢れていたはずの想いたち(魚座土星)の中にいる特別な私たち(乙女座金星・天王星・冥王星)……なのかもです。

やがて君の手が掴む永久(とこしえ)の真実
かなわないと思うから
いっそ高らかな声で
その歌に君は希望と名付けて泣いた
夢見る人の心に 確かに届くよ

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

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