創作・エッセイ

金星と海王星

  金星と海王星

金星らしきもの、カフェの飾り、きらきらとした服、華やかなアイシャドウ、濃い紫の鈞窯の色、お金で買えるもの、あでやかなる庭、軽き歌、楽しい思ひを出だすもの。

海王星らしきもの、もの悲しい水辺の夕暮れ、渺茫たるもの、雨、霧、みぞれの閉(さ)す空に低くただよふ古き歌、夜の海、ものすさまじい竹の雨、濡れたる梅、青凄みたる天国、おそろしき蛇の神、田舎祭りの祭壇飾り。

人の知りえぬ道の裏、游魂の六子をしたがへふらふらと游ぶ、その草の上、詞(ことば)を流せば寄る魂(たま)あり、寄らぬ魂あり、蜘蛛手なす水の草はら。

霪雨凄々、八つ手の水を絡ませて溢れて不已(やまず)淵は澱めり、淫祀の神楽のうやむやなままに語りて混ざり合ひ、神は増えたりたくんだり、小さき杯や甕を並べて祀り尽せず。

金星らしきもの、孔雀の羽を像どりたるもの、翡翠の色、色あるもの、雀の彩、鵜の彩、雛の彩、鸞の綾、鳳の綾。金星らしきもの、供へたる花、白き瓶、小さき色絵の皿にちらしたる紅葉と紙銭、海王星らしきもの、壇に焚し火、黒い煙、木造りの台、太鼓の音に鳴く詞(ことば)、夜の星。

知り得ぬもの、暗きものこそ尊けれ、垠(かぎ)りあるものにて垠りなきものを追ひては危ふけれ、怨めしき身。

雨、雪、霰、雲霧、霙、渺茫としてふき荒れぬ、飛仙の衣は雨を巻きて霙を散らし霰を飛ばして人はみな忘れたり。

祀り得ぬもの、山、川、霰、ふる雪の飾り立てたる庭の木々、玉の神、釵(かざし)の神に白糸の神、室(むろ)の霊(かみ)、灶の髻、煩壌(はきだめ)の神、忘れ易きは彷徨う鬼と車の音に逃げる蛇、忿滀(ふきだま)りたる塵芥、掘り返すこそ恐ろしければ、蓋かさねたり蓋かさねたり。

 これは昔X(旧Twitterのこと)に思いつきで書いたものから作ってみた詩なのですが、引用してみるとこんな話です(元の投稿は消失……)。

 金星と海王星(幻想的金星)の違いって

金星:形のあるおしゃれさ、花、お金で買える、カフェのBGM、昼の庭園、アールヌーヴォー、見ると幸せな気分になれる

海王星:形のないおしゃれさ、霧、お金で買えない、不気味で悲しい歌、夜の海、凄まじい色の宗教画、見ると気持ちが悪いけど吸い込まれる

みたいになりそうで、金星が牡牛座or天秤座で、高揚に月or土星、トリプリシティに月or金星 / 水星or土星みたいな感じで日常的な感覚でわかる天体が多いのに比べて、海王星の魚座って、サブルーラーに木星、高揚に金星、トリプリシティに火星でいい意味で止める・落ち着かせるものがない感がある……。

 木星は宗教、魚座トリプリシティの火星は底に秘めた感情の激しさ、それを繋ぐような金星の美意識が混ざっている意味が海王星一つに込められているとしたら、一種の狂乱した金星、異界化した金星(日常的な美意識が、妖や游魂たちの世界の美意識に乱される)的な美しさなのかも(どっちもいいですね…)

 泉鏡花・北原白秋あたりが日本の近代文学では月海王星合の可能性が高いのだけど、この二人の文章観って、人間よりも先に言葉の霊たちが漂っている世界があるみたいな感覚で、この「人間よりも先に別の霊や魂たちの世界があって、人間はわずかにそれに触れるだけ」みたいな感覚が海王星を覗く気がしたり、海王星のイメージとして漢字一字であらわすと「淫(水が多すぎる)」だと思っていて、淫祀の祭壇飾りは海王星的な美しさ、溢れて不規則に廻る淵も海王星、淫祀の神々が体系を定められないまま増えていくのも決められた祀り方が無くて祭壇が整っていない装飾過剰さも「淫(多すぎる過剰さ)」かも。

 これを詩で書いてみるとこんな感じになるかもなのですが、それと関連して東京の蔵前に「from afar」というカフェがあって、その空間が金星&海王星の融合みたいな感じがしていて、カフェと併設して花屋があった(ちょっと調べたら最近はカフェだけになっているらしいです。でも花の飾りはあるので雰囲気は変わってないと思います)のですが、それよりも印象に残っているのは不思議な石の像(たぶん仏像?)を店内に祀っていたことで、かなりおしゃれなカフェなのに突然ちょっとざらざらした石佛が祀られている感じがなんとも云えない不思議さだったり、おしゃれな調度品にあわせて独特の祀り方をしているところが淫祀的(淫:水が多すぎる、転じて装飾過剰さ・多すぎる過剰さ)だったり、たぶん倉庫を改装したカフェなので倉庫の奥から出てきたのかもしれないけど、その未整理な雰囲気がそれっぽいと思ったりしています。

 おしゃれなカフェ・花・きれいなカップみたいな金星的世界に、どこから出てきたか分からないけど不思議な仏像(かなり磨り減っていた気がする……)が仄暗い中に祀られていて渾然としている海王星的なものが入っていることから思いついた雑談みたいな記事です。

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

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