実体験

月・海王星の合と不幸依存

 アイヴィ・ヤコブソンの『Here and There in Astrology』という本に

 海王星は影のような星で、とらえどころがなく欺瞞的で、それでいて魅惑的でもっと見ていたいと思わせるようなヴェールをかけていく星で、それをかざすとより理想化されて不可思議にも見えてくる……(44頁。意訳してます)

という説明がされていて、金星をより“繊細で美しく”させたような姿としています(北原白秋「ほのかなるもの」に出てくる“ふりそそぐものみなあはれなり。雨、雪、霰、雹に霙、それさへたちまち消えうせぬ。土に置く霜、露のたま、靄、霧、霞、宵の稲づま、ほのかなれども水陽炎のそれさへ頼むに足るものなし”のような雰囲気です)。

 同じ本の8~10頁には、月が最後に合になった天体はその人の感情(月)に濃い色彩を副えることになる、という解釈が載っていて(ホラリーではチャートを立てた直前の月のアスペクトは直前に起こったことの描写、それ以降に出来るアスペクトはチャートを立てた以降の状況の描写という読み方があるので、おそらくそれを応用したもの)、月と海王星の合についての解釈がすごいので訳してみます。

(月がネイタルチャートで直前に海王星と合になっていたとき)その人の心の中には秘密か誤魔化しの言い訳、夢を見たり、思い描いたり、故知らぬままの靄がかかってきたりする。その理想は非現実的な桃源郷、あるいは夢想的すぎで、繊細なわりに実現は無理そうだったり、先に惑わされていると思えば、後には自己欺瞞で理由をつけたり、いつまでも続く自責や後悔がついてきたりしている。物事などは脇へ追いやられて、諦めさせられて、疎外されたままになって、いつまでも形にならず、これは月が直前に合になる天体の中で最も悲しいもの。

 ……心当たりがありすぎて五、六周して面白いのですが(笑)、ざっくり云うと月が海王星化してしまう、という意味ですね。

 ちなみに自分の例だと、月も海王星もどちらも山羊座で4ハウスなので、デトリメント的に抑圧されて一年中感情が岩と沼に潰されたまま腐っているのが或る意味落ち着くのですが、……まぁ冷静にみるとあまりいいものではないです、たぶん笑。っていうか周りに居たら地味にうざいタイプというか、なんとなく気分が楽しくなれないというか、楽しい感情を潰されるような気分になるだろうし。

 合以外にもハード・ソフト問わず月・海王星アスペクトは感情と幻想(妄想・嘘・欺瞞・滞った霧)がつながっているので、例えば合だと非現実的なこと(海王星)が気持ち的に落ち着く(月)みたいな意味(90度だと海王星に乱される、180度だと常にもやもや流れてくる、60度・120度だと或る種の癒やしになっているみたいな違いがありそう)になりそうです。

 ところで月と海王星のアスペクトは個人的には不幸依存的な形で出ていることが多いように思うのですが(自分の例です)、これは多分ですが、

海王星の非現実的な理想:魚座的なだらりどろりとみんな溶け合ってしまって、この世にいる人も全て腐り落ちて懶い感情の澱みの中に消えてしまえば幸せなのに、それが最も美しいのに。

月(落ち着く状態)と海王星(非現実的な理想)の合:記憶のある範囲(6歳くらい)のときには人間なんてみんな死ねばいいのに……みたいなことを思っていた。これはたぶん、自然な状態(月)は静かで黄昏的な腐敗に沈んでいきたい(海王星の魚座的な理想)という意味だと思う(90度・180度なら月を乱すように、60度・120度なら月を彩るように入ってくる違いがありそう。ちなみに月ではなく太陽・海王星だとより理想に向けて何かするようになるけど、月・海王星は懶惰で退廃的というか、朽ちていく世界に満ちている憂いみたいな感じだと思う。懶惰といっても動くのがだるいのではなく、動かない・何もしないで憂いと悲しみに沈んでいるのが幸せみたいな感覚)

のような内部構造になっていて、それ故どことなく不幸依存的な感じになると思ってます。

 尤も、不幸依存といっても人に不幸アピールをするというより、自分にとって自然な状態(月)が腐り落ちていくような憂いの中に浸っていることなので、自分一人でそれをしていればいい、自分にとってはそれが最も美しい生き方だから、みたいな感じが近い。

海の近くの古い街、そのまま暮れてさようなら、
夜には真珠の雨がふる。

 このアスペクトの感性、個人的には大好きなのですが、現実世界で自分がやっていることが時おり全て気持ち悪くなるというか吐き気がするというか醜いもののように思えてくる。

芸は永く命みじかし、とは云ふものの、滅び易きはうき世のならひ。
うたも、しらべも、いろどりもゆめのまたゆめ。

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

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