レビュー

ノード軸の解釈について

 最近はホラリー系の記事が多かったけど、前から個人的に気になっていたこととしてノード軸(ドラゴンヘッド・テイルのことです)の読み方が今一つ分からないというのがあって、ホラリーではヘッドは吉、テイルは凶とされているけど、ネイタルに応用するときはもっと別の読み方をしたい……と思っていたので、ジェフリー・ウォルフ・グリーン『魂の設計図』を読んでみて、色々と魅力的な解釈があったので、その概要をネタバレになりすぎないくらいに書いてみます(かなり抽象的な話になるので、表現がとても難しい……。一部に間違いがあるかもですが)

ノード軸と冥王星

 まず、ジェフリー・ウォルフ・グリーン氏は進化占星術という系統の占星術に分類されていて、モダン占星術の一派なのですが、特に魂が何度も転生を繰り返す中で、今世ではどのようなことを経験するために生まれてきたか、どのような進化をしていく過程にあるかを読むような占星術です(前世があるかどうかは人によって考えが分かれるかもしれないけど、ホロスコープの読み方はとても深くて魅力的で、心の深いところに触れてくる解釈だと思っています)。

 まず、よく言われるのはドラゴンテイルは前世で既に経験済みのこと(あるいは前世という語を使わずにいうと、無意識に出てしまう癖や流されやすい方向、安住しがちなものなど)、ドラゴンヘッドは今世で経験していくこと(あるいは意識して身に着けること、流されやすい癖を補うようなもの)とされていますが、これが無意識に出てしまう楽な在り方(月)と意識して手に入れる輝き(太陽)、精神的な基盤や落ち着ける場所(IC)と表向きの姿や功業(MC)などとの区別が今一つ上手くできないと思っていて、そのノード軸について本書では「この一生の間で、既にもっているものはドラゴンテイル、これから目指すものはドラゴンヘッド」としています。

 ただ、ここで問題になるのは、たとえばテイルと太陽が合、あるいはヘッドと月が合などというホロスコープも出てくることで、こういうときに通常の読み方では「既に得ているものが太陽、目指すものが月?」みたいなことになってしまい、矛盾してくる例があることです。

 それについて、進化占星術では魂は基本的に一回の生ではすべてを網羅するように学ぶことはできないので、大きい世界のうち極々狭い一部をやや偏った形で経験することで学ぶ、という視点で読んでいきます。なので、今世ではそのような矛盾のある形を経験する、あるいは混ざり合った状態がその人の在り方でもある、という解釈になります。

 そして、多くの魂は同じ世に生まれたもの同士は冥王星を同じサインに持っているので、それぞれ似た性質を持っているが、それぞれ冥王星のあるハウスは異なるので、冥王星がその魂に与える本質をそれぞれ違った面で発揮しながら生きていく、としています(冥王星は人間の世界を超えた力や未知のもの等でもあり、それに染められるようにして魂たちがこの世に出てくる、みたいな意味だと思います。かなり意訳した解釈ですが……)

 そうなると、人間の魂は冥王星から、奥に流れる本質・時代の色のようなものを与えられながら、その本質がどのような面で現われるかは冥王星のあるハウスによって異なっていることになります。そして、月はもっとも個人的な人間の在り方や感情をあらわすので、月のノード軸はその一生の間にする経験(「月:一人の人間」が生きている間にどこから来て、どこに行くのか)をあらわすので、冥王星によって時代の色に染められながら、月のノード軸の示す生き方をして、それぞれの学びをしていく、というのが読み方の大きい枠組みになります。

 もっても、冥王星は20年近く一つのサインに留まり、ノード軸は18年ほどで一周するので、これだけだとその頃に生きていた人たちはみな同じような人生になるのでは……となりそうですが、冥王星の入るサインのルーラー、冥王星の入るハウス、あるいは月のノード軸の入るサインのルーラー、月のノード軸の入るハウスなどによって、それぞれの魂がどのような面で経験を重ねるかが異なり、さらに冥王星や月のノード軸とのアスペクトがある天体も解釈に絡んできたり……という形でかなり細かく読んでいきます。

(もっとも、それより一段大きい枠組みとして、魂の漂う大きい流れとして冥王星のノード軸があるのですが、有史以来ずっと冥王星のサウスノードは山羊座、ノースノードは蟹座にあるので、それぞれのルーラーは土星と月になって、これはこれで山羊座・土星の堅い秩序性から蟹座・月の心の安らぎやそれぞれの自然な在り方へ向かうという、ある意味では人間らしさの本質のようなものを表しているようにも見えて、それぞれの人が月・土星をどのサイン・ハウスに持っているかでも解釈が深められる、という理論になっています)

 というわけで、冥王星はそのときの魂にどのような本質を与えているか(冥王星のハウスやアスペクト、サインルーラーはその装飾的な意味になります)、月のノード軸は冥王星から与えられた魂の性質を持ちながらどのように進化していこうとするか(サイン・ハウスによって大きい進化の方向性が示されて、ノード軸のサインルーラーの状態やハウス・ノード軸へのアスペクトもその装飾部のようになっています)を表していると読んでいます。

 かなり個人的な理解ですが、大体はこのような枠組みになっている中で、冥王星と月のノード軸を中心にしながら、それらを囲む天体たちがどのように関わるかという視点が解釈を統合していく感覚はすごく魅力的で深みがあると思っています。

 そして、もう一点の本書独特の理論として「冥王星対極点」というのがあって、冥王星は魂の与えられている本質や色のようなものを表すけど、冥王星によってあらわされる魂の本質が望むことを得るためには(例えば蠍座冥王星世代だと諫山創さんの『進撃の巨人』のような一種の差し迫った雰囲気、その主題歌を歌った神聖かまってちゃんのような薄暗い社会みたいな色が魂の本質だとすれば)、その本質(種)が育てられてどのような変貌をするか、その変貌の在り方を示すのが冥王星対極点、という理論になっています。

(この説明は自分でも上手く書けている気がしない……。あるいはサビアンシンボルで、第四グループで対向サインの性質を取り入れて、第五グループの25度でより拡大解釈されたサインの意味が出てくるという流れがあるとすれば、あるサインの一度はそのサインの魂の本質、あるサインの第四グループのサビアンは冥王星対極点、第五グループの中でも完成形にあたる25度はより深く広いものを含み込んだそのサインの本質、みたいな形かもしれないです。例えば、山羊座1度:賛同を求めるインディアンの酋長は山羊座の権力構造的な面を出しているサインの本質、あるいは冥王星が山羊座にある時代の魂の本質だとすれば、第四グループで蟹座的なものを取り込んでいる様子は冥王星対極点によって本質がさらに深められて広げられていく様子、山羊座25度:東洋のじゅうたんを扱う商人は異質な文化まで包含している大きい秩序になっていて、山羊座の権力構造は無理やり抑えつけるよりも共同体として含み込んで共存していく蟹座的な面を取り入れている、みたいな。

 魂の本質は、冥王星の暗くて辛い思いをさせる以上に、その本質を通じてみえる世界をもっと豊かにすることを望んでいて、その魂のために世界は生まれたと思えるような瞬間を感じさせて再生するような気持ちを味わうには、本質をより豊かに育てていく、みたいな意味です)

 また、ノード軸や冥王星へのアスペクトについては、ソフトアスペクトは既に身についている資質として、前世以来の持ち越しで活かせるもの、ハードアスペクトは今世でノード軸や冥王星と向き合うときに併せて学ぶこと、という意味になるとされます。

 なので、色々書きましたが大きくまとめると、

・冥王星はその時代に生まれた魂たちに或る色や本質を与えていて、それは通常の占星術でいうような冥王星の意味に似て差し迫ってくるようで抑えつけるような観念だったりもするけれど、冥王星にあらわされる観念の逆のこと(冥王星対極点)を経験することで、魂の本質を残したままより豊かな世界を感じられるようになり、さらに月のノード軸にあらわされる変化の方向性も合わさって、そのホロスコープの大枠が作られる

・冥王星とその対極点(冥王星の対向サイン)、月のノード軸はホロスコープの意味を統合していく際の二つの大きな主流になり、そのサインとハウスによってホロスコープの意味が大きく決まっていく

・冥王星とその対極点の入るサインのルーラー(およびそのサイン・ハウス)、月のノード軸の入るサインのルーラー(およびそのサイン・ハウス)、さらには冥王星やノード軸とのアスペクトなどが解釈に装飾的に加えられる

・冥王星やノード軸へのアスペクトは、ソフトアスペクトは前世で既に十分身についている資質なので、その課題に向き合うときには力になり、ハードアスペクトは今世で取り組む課題なので、冥王星やノード軸に向き合う際には同時に経験することになる学びを表している

という理論の構造になっています(これだけでも十分深い体系です……)。

遊魂のふわふわと

 ここまででも十分過ぎるのですが、本書でさらに魅力的なのは、さきにあげたドラゴンテイルと太陽が合、ドラゴンヘッドとDSCが合などという一見矛盾する場合についてどのように解釈するかを載せているところだと思っていて、これについてはリーディング例もかなりの数が載っています(中には海王星や天王星などのノード軸も使っているかなり複雑なものもあります)。

 たとえば、ドラゴンテイルと太陽が合という場合は、テイルは既に身についている資質なのに、人生の目的とされる太陽がそれに重なるとすると、ドラゴンヘッドは目指さなくていいのだろうか……となりそうですが、これは主に前世でテイル的な面を学んでいたが、さらに今世でよりドラゴンテイルを深く学ぶために太陽もそこにあり、さらにテイル的なものを深めることがヘッド側を学ぶことにも通じていく、という構造になっているらしいです。

 あるいは、ドラゴンヘッドとDSCが合という人(ドラゴンテイルとASCが合でもあります)は、既に学んでいる資質はASC側でみずからの自然な姿として出しつつ、DSC(他者との関係)に於いて今世では学ぶことが多い(どのようなことを学ぶかはDSCのサインによって変わります。DSCが射手座だとしたら、遠く深いことを一点極めるようにすることを他者から学ぶ、DSC魚座だったら豊かな想像力や見えない感情のつながりを他者との関係から学ぶ、などの解釈ができるかもです)という意味になります。

 個人的にこの解釈の統合は、いわゆるテイルが~にある人は……という意味を貼り合わせるだけで作る解釈よりも、何倍も深みや軽重、緩急などがみえて、ホロスコープのエネルギーの偏りが感じられると思っていてすごく魅力を感じてます。機械的にサインとハウスの意味を重ねていくと、矛盾する意味が出てきたときに「テイル的なことをしがちなのが、あなたの人生の目標(太陽)です。なので、目標に引きずられ過ぎないでいましょう」みたいになって、それだとどことなく残念な人生なのでは……みたいに思えてしまうことがあるけど、「テイル的なことをしながらヘッド側も同時に学んでいく、その学びには~ハウスと○○の天体が関わっている」みたいにすると、一気に綺麗で本質を描いたような読みになります。

 ホロスコープの中でもう一つの本流をつくる冥王星とその対極点の軸も同じで、たとえば冥王星に月が合で、さらに月・冥王星に海王星が120度だとしたら、月(私的な感情)は冥王星(その時代の魂の本質。ときには内から出てくる衝動のような面にもなる)に時には毒され、時には突き動かされるような気持ちになるけど、前世で育てた海王星(詩的・芸術的な感性など)の面は、月・冥王星の重さを和らげる緩みにもなり、あるいは冥王星対極点の経験を通じて月・冥王星合の世界をより豊かにしていくためにも間接的な支え(60度)になる……という形です。

 ちなみに余談ですが、この本を読んで、個人的にすごく良かったのは、出生図でASCルーラーの金星とテイルが合になっていて、ASCルーラー的なことが自然な性質なのに、それに引きずられていると人生は進展がない……みたいな意味かと思っていたけど、ドラゴンヘッド的なことを学ぶために、今世ではテイル的な生き方を通じて、さらにみずからの性質(ASCルーラー)も敢えてそこに重ねて深めて経験してみよう……という意味で読んでみると、かなり納得できることです。

 前世の有無は人によって考えが分かれるかもですが、前世を信じるか否かよりも、何度も転生を繰り返すうちに不規則な偏りを持ちながら幾つもの魂が漂っていく様子はとても不思議で、前世という一回り大きい枠でみたときに今世の魂はどのような偏りを帯びながら生きていくか、その偏りがあること、その偏りの在り方が人によって異なることを感じられるのが本当の魅力だと思っています。

(冥王星やヘッド・テイル軸のアスペクトについては、この記事の後ろの方に書いてます。かなりイタい自分語り記事ですが……。ちなみに、この記事のヘッダー画像は文月ルビーさんのサビアン画から、テイルと合になっている金星の度数をお借りしています)

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

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