アイヴィ・ヤコブソン

華山十大未解之謎

 この記事で書くことは占星術にわか勢の戯言みたいなものなので、かなり妄言だと思って読んでください。

 ホラリーの本をみていると、見るからに良さそうなチャート、見るからに無理そうなチャートというのがある一方、良いのか悪いのか分かりづらいチャート(大体そういうチャートは著者も読めなかった例として出ている)があって、そういうチャートの一つの特徴として“ハードアスペクトがあるのに、いい結果になっている”というのがありそうな気がするので、もしかするとこの記事で書いてみるような話が関わっているのかもしれない、的な記事です(だからと云って、難しいチャートが読めるかと云われると多分できない側の云うことなので、無視してもらって全然いいですが笑)。

瓮の中には洞があって、洞の中にも瓮があって

 まず、個人的に全然わからない占例として印象に残っているのが、アンソニー・ルイス著『ホラリー占星術  入門と実践』87頁に出てくるチャートで、その解釈はこんな感じです。

 1974年2月3日の日曜日、マクエバーは友人からこんな質問を受けました。「私の家は今月末に燃えていますか?」……

 チャートは質問者の心配事をよく表すふさわしいものでした。その日は日曜で、火の天体の太陽は、「質問」そのものを表す水星と一緒に、死と破壊の第8ハウスに位置しています。質問者を支配する月は不安と悲しみの第12ハウスにあり、質問者の精神状態をあらわしています。占星術家を象徴する第7ハウスカスプの山羊座のルーラーは土星で、これもまた第12ハウスで質問者を表す月に合となっています。占星術家が質問者と一緒に心配し、質問に答えるのに苦労することが土星から見てとれます。

 第7ハウスカスプ山羊座のルーラーの土星は、第12ハウスで逆行しています。第7ハウスのルーラーが逆行しているということはつまり、占星術家が読みを誤ってしまう可能性があると警告しています。……マクエバーの友人は、雑誌『Horoscope』の月間占いで、家が火事にあうという予言を読んだようで、不安にかられて質問したというわけなのです。第12ハウスの土星と月に見てとれるように、チャートではマクエバーとその友人双方がかき乱されています。質問者を支配する月は、火事になりそうな自宅を表す第4ハウスカスプのルーラーの金星とオポジションをとろうとしています。2つの逆行する凶星、冥王星と天王星が第4ハウスにあり、これは不動産を示す副ルーラーになっています。質問者を表す月がこの後、この2つの逆行する凶星にスクエアとなります。かなり悪い状況のようです。今すぐ消防隊を呼んだほうがいいかもしれないぐらいです!月末まで待っている場合じゃないかもしれません?

 マクエバーは、相当な時間をかけてこのチャートの意味を考えました。チャートを他の占星術家にも見せましたが、彼らの解釈もやはり家は火事になるというものでした。でも、2月はやってきました。そして何事もなく過ぎ、今でもその家は建っています。火事なんて起らなかったのです。普通の人なら、ホラリー占星術なんてやめてしまったかもしれません。でもマクエバーは、あくまでもこのチャートの意味を理解しようと努めました。そして水瓶座人の利点を発揮して、状況を抽象化し、彼女のメソッドの基礎となるものに行きついたのです。マクエバーはここで、スクエア・オポジションは「ノー」、トライン・セクスタイル・コンジャンクションは「イエス」を表すというルールを導き出しました。このチャートをマクエバーのやり方を使って読むと、質問者のルーラー(月)と、家のルーラー(天王星・冥王星)間のスクエアまたはオポジションは、元の質問に対して「ノー」という答えになることを表します。つまり答えは、「いいえ、家は燃えません」なのです。

 私は同じチャートに別の方法でアプローチし、同様の結論に達しました。質問が家のことで、それが燃えるかどうかという内容だったので、デリヴァティブ・ハウスを使ったのです。不動産は第4ハウスに属する事項です。天秤座が第4ハウスのカスプなので、金星が主たるシグニフィケーターです。冥王星と天王星は家の第2のルーラーです。

 伝統的な占星術での「全焼」に関するハウスがどれにあたるのかわからなかったので、私は火星を火のナチュラル・ルーラーとして使いました。リリーはかつて火星を象徴として使い、ロンドン火災を予言しました。ハウスで見るなら、第4ハウスから数えて8個目のハウス、つまり元のチャートの第11ハウスを使うのが良いでしょう。8個目のハウスというのは何でも、起点となるハウスに表されるものの怪我や死を意味します。

 チャートでは第11ハウスに火星があるため、私の考えは合っているようです。チャートに導いてもらうとうまくいくものなのです。第11ハウスのカスプは牡牛座なので、金星が家とその消滅のルーラーとなります。第11ハウスの中にある火星はもう一つのルーラーとなります。すでに金星が、家を表す第4ハウスの主たるルーラーになっていることと、火星は火災を支配することから、私は火星を「全焼」の第11ハウスの主たるルーラーと定めました。

 金星と火星はこの後どのようなアスペクトをとるでしょう?金星は山羊座27度で逆行しています。火星は牡牛座17度で順行です。2つの天体は、天文暦で見ると1974年2月23日にぴったりトラインになる予定です。月末の火事を表すどころか、家のルーラーは火のルーラーに対して考えられる限り一番良いアスペクトを取ろうとしているのです。というわけで、私の答えは「いいえ、家は燃えません」でした。火のルーラーはこのとき家に対して好意的でした。もしスクエアかオポジションだったら、私も警戒したことでしょう。

 ここまでの話を読み返すと、ここで質問者がもともと質問したかったのは、家が燃えるかどうかということではなくて、雑誌『Horoscope』の占いは当たっているのか?ということではないかと思えてきました。もし私がこのときに質問者に聞いてみることができたなら、「予言(噂)は本当ですか?」と質問を言い換えていたかもしれません。私は太陽星座占いについてはあまり見識もなく、せいぜい噂くらいにしか思っていないのです。

 噂は第3ハウスで見ます。カスプは乙女座なので、水星がそのルーラーになります。水星はレポートやコミュニケーションのルーラーでもあります。水星は第8ハウスにあり、死や破壊に関する噂としてはうってつけです。噂に対する「事項の結末」を表すのは、第3ハウスから4つ目の、第6ハウスで見ます。第6ハウスのカスプは射手座なので、木星が噂の結末、つまり噂が消えた後に残る真実を支配します。水星と木星はこのチャートではアスペクトを形成していません。アスペクトがなければ、アクションも起こりません。この噂に関しては、何も起こりません。嘘の噂なのです。月末に家は燃えないのです。(86~89頁)

 これって矛盾してないですか? 誤字的なものかと思ったけど、仮に誤字があっても天体の配置は変わらないし……。

マクエバー:家は燃えますか?
 →シグニフィケーター間のハードアスペクトなので“いいえ、燃えないです”

アンソニー・ルイス:家は燃えますか?
 →シグニフィケーター間のソフトアスペクトなので、“(家と火の関係は良い)、なので燃えない”

 その人によってうまく読める技法が違うと云われればその通りなのですが、それでもちょっと納得しがたい気がするのですが……。ちなみにこの本の168頁には

 トラインはシグニフィケーター同士の幸運な関係を表します。公益を目指して働くこともあるでしょう。望んだ仕事を成就することも簡単でしょう。トラインは大して努力のいらない幸運と成功を意味します。……

 オポジションはネガティブで、がっかりさせる、別れのアスペクトです。シグニフィケーターが180 ゚のアスペクトにアプライすると。争って離れてしまったり、障害物のあちらとこちらに別れてしまったりします。二人も人物のルーラーがオポジションにあれば、二人の間には争いが起きて、離れてしまうでしょう。……

 スクエアもまた、ネガティブな影響を意味し、克服しなければならない問題や障害があることを示唆します。スクエアはパワーのあるアスペクトで、たとえ問題が解決しても、質問者には後悔が残ります。スクエアは欲求不満、困難、喪失、そして、何かを完遂するのに多大な努力が必要なことを表します。(168~169頁)

とあって、福本基先生の『基礎からわかる  伝統的占星術』では

 現代占星術では、アスペクトというものの良し悪しというのを、かなり重視します。
 例えば、占いをして、「この願いはうまくいきますか?」という質問で、木星がトラインの状態で恋愛を示す星にアスペクトしていたら、「良いですよ、うまくいきますよ」と答えたりします。……一方、伝統的占星術ではアスペクトだけで、吉凶を判断しません。
 良い悪いという意味では、確かにハード・アスペクトは悪いですし、ソフト・アスペクトは良いです。

 しかし、伝統的占星術では、そこはむしろ連絡の取りやすさや、物事の完成に努力を要するかどうか、を表しています。例えば、意思疎通が良いということは、良さの一つです。仲の悪い人でも、連絡がうまくいけばなんとかうまくいくものもあります。……
 伝統的占星術では物事がうまくいくかどうかというのは、惑星が左右しますが、現代占星術ではうまくいくかどうかというところを、アスペクトが左右します。ですから現代占星術では本来は悪い惑星、例えば凶星である土星がトラインであったり、火星がセクスタイルだったりしても良いと考えたりします。……

 仮にホラリーで、恋愛の質問をもらって、関連ある天体同士がアスペクトを形成するとしましょう。
 ソフト・アスペクトを形成するというのは、簡単に会えるというコンタクトのしやすさを示しています。そしてうまくいくかどうかは、天体同士のディグニティが左右することになります。……ただ、このトラインというのは“簡単に”ですから、例えば車を表す星があって、それが破壊の星とトライン・アスペクトを形成するなら、車が簡単に壊れるということになります。
 
 ですから“簡単に”という概念が単純に良いというわけではないということが非常に重要です。(143~144頁)

と書いてあるのも、(古典にはレセプションもあるかもですが、今回は話の内容と関わらないので置いておきます)古典とモダンでアスペクトの解釈が違うということで済ませてもいいのですが、モダン系のホラリー占星術(デレク・アップルビー、アンソニー・ルイスなど)では、殆どの占例で「ハードアスペクトは不成就」みたいに読んでいます(さきに載せた“スクエアは完遂するのに多大な努力が必要”みたいな読み方はモダンホラリーでは殆ど無いです。尤も、“すごく頑張らないと出来ないこと≒ふつうは出来ないこと”なのかもですが)。

 というわけで、これについて、かなり癖のある解釈が思いついたので書いてみます。

“日月昌明”

 そんな訳で、最近何度もこのブログで題材にしているアイヴィ・ヤコブソン『Here and there in astrology』の185頁には、イベントチャートの読み方として

(ある出来事が起こった時間のチャートを出したときに)その出来事は、太陽が入っているハウスの性質を持ち、さらにカスプが獅子座に入っているハウスの性質も底に帯びることになる。さらに、その出来事の中での動きは、月の入っているハウスで表され、カスプが蟹座に入っているハウスの性質も底に帯びていくことになる。獅子座・月・蟹座のかかるハウスは、太陽のあるハウスの意味を裏付けていく。

という読み方が載っていて、これって云われてみるとホラリーでは

~ハウスカスプのルーラーは、“~ハウスルーラー”
…ハウスの在室天体は、“…ハウスの副ルーラー”
(アセンダントルーラーの木星が仮に11ハウスだったら、木星は1ハウスのルーラー兼11ハウスの副ルーラーみたいな感覚)

みたいにしていることからも納得できるし、この感覚をイメージしやすい例として

 金星は4室(土地)のルーラーで、牡牛座(沃土)にあるので、その土地は饒沃。4室には海王星があるので、豊かな花のある其の家は、海王星の美しい靄がかかっているような雰囲気……。さらに(ハウスルーラーとのアスペクトについては)4室ルーラー(土地ルーラー)の金星は、木星と60度なので甘い果物や葡萄がたくさん茂っている。牡牛座金星は乙女座土星とも120度なので、丁寧に育てた野菜もある。9室魚座のルーラー海王星も4室にあるので、古いヨーロッパ風の幻想的な魅力がある(110~111頁)

というのもあって、ハウスカスプのルーラーがそのハウスの全体の雰囲気をつくって、その中に在室天体が彩りを加えているみたいな雰囲気をイメージするとわかりやすいかもなのですが、この感覚でイベントチャートを読んでいる例が幾つかあるので、それを載せてみます(このときアイヴィ・ヤコブソンは、太陽・月・獅子座・蟹座のハウス以上にアセンダントの星座やアセンダントルーラーの様子でホロスコープ全体の雰囲気を感じ取っているみたいな印象がある。尤も、これは先にあげたアンソニー・ルイス著の本でも43頁に一応載っている技法なのですが、アンソニー・ルイス本人は一度も使ってないです)。

 ある殺人犯が事件を起こしたのち、のうのうと逃げ延びたときのチャートとして、……まずこの事件は私室(太陽は2ハウスにあり、インターセプトで閉ざされていて、眠っているイメージの魚座にあるのでおそらく寝室)で起こっており、月(他者の7室ルーラー)が1ハウスに入ってきていてデトリメント(異域に一人入っている)なので、侵入者(他者:7ハウスルーラー)がみずからのところに来ている感がある。

 さらに、アセンダントルーラー土星は4室(家)で12室ルーラー木星(不穏な忍び寄るもの)と合になっていて、獅子座が8ハウスにあるので、太陽は8室ルーラー(死のルーラー)でもあり、……アセンダントは山羊座で、山羊座は10ハウスのナチュラルサインで、蠍座(死と再生)が10ハウスにあって、さらに10ハウスルーラー火星は12室(刺客・不穏さ・秘密)にあるので、10ハウスは“死罪の実行”のような意味になる。(194頁)

 このリーディングで独特だったのは、「アセンダントは山羊座で、山羊座は10ハウスのナチュラルサインで、蠍座(死と再生)が10ハウスにあって」のところで、10ハウスは社会や地位、権威者などの意味がある中で、アセンダントルーラーの土星が忍び寄る不穏さ(12室ルーラー木星)と合・10室ルーラーの火星も12室にあるので、“死罪の実行(原文:excecution)”的な意味になる、というところで、アセンダントの雰囲気が全体のハウスの意味を微妙に変えたりしていて、いままでアセンダントって第一印象みたいな意味くらいにしか思ってなかったけど、アセンダント&アセンダントルーラーが全体の雰囲気を出していて、さらに太陽や月もその間を埋めるように色々な意味になる、みたいに読んでいるらしいです。

(本の中では太陽・月と獅子座・蟹座のハウスの方が大事みたいな書き方だったけど、全体の雰囲気はむしろアセンダント&アセンダントルーラーのほうが濃く出ている感があります、読んでみた印象ですが)

 というわけで、アセンダントでハウスの語彙の中からどれが近いかを読んでいる例を載せてみるのですが、つぎは或る学校で起こった暖房のガスパイプの爆発事故のチャートらしいです。(イベントチャートのリーディングは一部略したり意訳したりがあります)

 これはとりわけ不幸な出来事で、太陽は8ハウスで土星と合で、土星は山羊座海王星とミューチュアル・レセプション(アイヴィ・ヤコブソンはミューチュアル・レセプションだと、天体は元の度数のままでサインを入れ替えると読む。なので、太陽は海王星との合を兼ねる)。ちなみに海王星はガスのナチュラルルーラー。さらに月は不運の12室のルーラーにもなっている。アセンダントは獅子座なので、獅子座は5ハウスのナチュラルサインだとすると、5室ルーラー木星は12室の冥王星(隠れた毀壊)と180度になっている。

 さらに偶発のハウス(11室)にある月は、最近唐突な災厄(天王星)を通り過ぎたばかりで、8室の太陽と90度、さらに水星(11室ルーラー)は天王星と45度(45度は90度系に含まれるハードアスペクト)なので、もしかすると爆発の意かもしれない。(206頁)

 このリーディングもとても興味深いのは、11ハウスって基本的には希望・友情・趣味の集まりみたいな意味になるけど、アイヴィ・ヤコブソンは213頁で「無形のもの、不測の事態、形のない希望や願い、大きい広がりのあって常事を外れたもの」という意味を出していて、このときは「偶発的な」という意味で11ハウスを読んでいます。

 これはたぶん、太陽が8ハウスにあって、月が12室ルーラーなのでどちらかというと不穏なチャートだから……というのもありそうだけど、個人的にはアセンダント獅子座・8室太陽が燃えつづける破壊の火、さらに太陽は魚座にあるので海王星(ガス)がディスポジターで、2室乙女座海王星は8室魚座水星とミューチュアル・レセプションなので、水星(滞りなく送ること、パイプ)と海王星は状態が悪いまま(相互デトリメント)ガス漏れ等のまま混ざり合っている、と読めそうです(こんな感じで、どちらかというと不穏なチャートなので、11室も「偶発の」みたいな意味になるかもです)。

 もう一例リーディングをみてみると

 これは或る女性が停電している中、恐怖を冒して家に帰ろうとして小高い坂を走って登っていたが、心臓に負担がかかりすぎて失神して亡くなってしまったときのチャート。

 アセンダントルーラー木星は、火星と合・海王星と90度で、漂う不安の中での勢い余った様子という雰囲気がある。さらに月は8室のルーラーになっていて、8室にある死の冥王星と180度で、さらに冥王星は獅子座(心臓)にあるので、死因にもつながりがある。

 太陽は5ハウス牡羊座にあり、ここでは5ハウスは「賭けに出る」という意味になると思われる――なぜなら、アセンダントルーラー木星は、大胆な5室ルーラー火星と合になっていて、水星火星ミューチュアル・レセプションがあるので火星は牡羊座19度にやってきて太陽とも合になる(強いて云えばアセンダント射手座も無茶しがちな印象かも)。

 アセンダント射手座は9室のナチュラルサインなので、9室をみてみると獅子座があり、ここでの9室は「どこかへ行く」的な意味になりそうで、アセンダントルーラー木星が移動する双子座にいることにも合っている。

 もっとも、これはアセンダントルーラー木星が12室ルーラー火星と合になっていることから不幸な出来事ということになり、さらに太陽も火星(ミューチュアル・レセプションで移動してきた)と合になる。というわけで、危険を冒してどこかへ行く途中で亡くなった、と読めるのかもしれない。(200頁)

 このリーディングで不思議だったのは、火星は5室ルーラーと12室ルーラーを兼ねているところで、12室(不穏・不安)と5室(危険を冒す)の意味が微妙につながるように読んでいたり、それがアセンダントルーラー木星の状態(不安な中で危険を冒す火星と合)からどことなくすべて繋がるように読んでいる感覚って、他ではあまりみたことがないです。

 こんな感じで、アイヴィ・ヤコブソンのイベントチャート読みは、アセンダントとそのルーラーの状態などからチャート全体の雰囲気を感じ取って、その雰囲気の中でハウスの意味などを重ねていくところが不思議な魅力を帯びています。

(あと、どうでもいいけど、アイヴィ・ヤコブソンは天王星を偶発or突発の“發”、海王星をどこからともなくいつの間にか近くにいる不安みたいに読んでいる。冥王星はあまり使わないけど、“死・蠱壊”みたいな意味が多い気がする)

 余談だけど、これの技法を応用すると出来事の擬人化みたいなことができそうで、さっきのガス爆発のチャートだと、アセンダント獅子座で燃えつづけているようだけど、どことなく暗い夢見がちで、水星(11室偶発ルーラー)・海王星(8室ルーラー)ミューチュアル・レセプションで話ぶりも不安さと飄忽茫洋として取りとめない外への広がりのあるような雰囲気になったり、双子座月も12室ルーラーだとあちこちやや気まぐれなイメージになったり……みたいな(アセンダントって、第一印象とか卵の殻みたいにいわれるけど、全体にかかっているトーンみたいな意味で読んでいる例をみて、なるほど……と思ったり。太陽・月・アセンダントの三点を重視して全体の意味を感じ取っているらしいです)。

瓮の中には洞があって、洞の中にも瓮があって  二

 というわけで最初に出した「家は燃えるでしょうか?」の話に戻るのですが、

 質問者を支配する月は、火事になりそうな自宅を表す第4ハウスカスプのルーラーの金星とオポジションをとろうとしています。2つの逆行する凶星、冥王星と天王星が第4ハウスにあり、これは不動産を示す副ルーラーになっています。質問者を表す月がこの後、この2つの逆行する凶星にスクエアとなります。かなり悪い状況のようです。今すぐ消防隊を呼んだほうがいいかもしれないぐらいです!月末まで待っている場合じゃないかもしれません?

のところに出てくる月は、アセンダントルーラー兼12室副ルーラー(私の不安ルーラー)なので、チャート全体に“私の不安”という色がかかっています。太陽は8ハウス水瓶座にあって、さらにディスポジターの土星も12室で月と合なので、全体的に不安・悲観の色があります。さらに12室ルーラーの水星は8室(亡び)の中にあって、不安は亡びの中にある、という感じです。

 あと、引用した部分では触れられてないですが、4室にある天王星・冥王星はそれぞれ8室・5室ルーラーなのですが、5室は刺激・娯楽という意味もあるけど、全体の雰囲気として“不安”があるとすれば、5室&8室って「壊れることの恐怖を煽る悪趣味な娯楽」みたいな意味で、それが家(4室)について現れた感があります。なんていうか、不安と恐怖ばかりがあちこちに漂っていて、チャートの性質としてぞわぞわしているようなイメージです。

 ところで、この質問は「雑誌『Horoscope』の占いは当たっていますか(あるいは、噂・予言は本当ですか?)」と言い換えることができるとありましたが、或いはアセンダントルーラーを読む場合、「私の不安(12室+1室)はどんな状態でしょうか?」みたいに質問を言い換えられそうで、そうすると「私の不安(12室+1室ルーラーの月)は、悪趣味で不安を煽る娯楽(5室ルーラー冥王星&8室ルーラー天王星)が家について気持ちを乱してくる(4室からスクエア)、さらに私の気持ち(月)は土星と12室で合なので、悲観・不安に陥りがち」みたいに読めそうです。

 ちなみに、家のルーラー金星は、アングルにあって、さらにトリプリシティもあるので、ディグニティはそれなりに良さそうです。金星(家)と私の不安(月)は、いずれ180度になるので、結構状態のいい家から私の気持ちは離れて(180度)ひとり不安の中に居る、みたいな感じで読んでもいいのかもです。(もっとも、このチャートをみせられたら絶対に間違えてみせる自信ありますが……笑)

 余談だけど、4室とその亡び(4+8室)で読んでみると、4ハウスと11ハウスのルーラーは金星になるけど、既に家のルーラーが金星なので、11室にある火星を火事のルーラーとすれば、火星は5室(4+2室で、家の中にある物)・10室(4+10室で、家を燃やす敵)を兼ねるけど、火星はデトリメントで牡牛座に置かれて抑え込まれている(牡牛座の火はたぶん台所の火)、一方の金星は山羊座でトリプリシティなので牢固、という感じになって、家(金星)は強く、火星(火)は小さいですが、さらに古典読みすると火星はエグザルテーションで金星を支えていて、金星は牡牛座でドミサイルなのでミューチュアル・レセプションになっていて、関係は良いらしいです(ルーラーを兼ねるハウスによって、微妙に雰囲気を変える読み方っぽい)

 こんな感じで、アセンダントルーラーがホロスコープ全体の雰囲気をあらわしている例って、読んでみると結構ある気がします。というわけで、それっぽいものを二つくらい載せてみます。

(アイヴィ・ヤコブソンは、イベントチャートだけでなく、出生時間やホロスコープが不明な人が立てたホラリーチャートや、その人が重要な書類にサインしたり或る決定をした時間のチャートもその人の特徴を湛えている、という読み方をしていて、ホラリーチャートから全く別の意味を見出したりしているので、この記事で書く話もまったく荒唐無稽ではないと思ったり……)

B夫人の肝臓移植

 私が仕事を通して知り合った看護婦は先天的な肝臓疾患を持って生まれました。彼女の体調は中年になるにつれて次第に悪化していき、とうとう彼女の担当医が肝臓移植を行う決断をしました。……肝臓のドナーの知らせを聞いた私は、その時間のチャートを立てました。私の質問は「B夫人の肝臓移植の結果はどうなるか?」です。……

 第7カスプ(血縁関係にない他者)をB夫人に割り当てると、彼女のプライマリー・ルーラーは木星になり、副ルーラーは海王星になります。ミュータブルのアングルは、不安定な状況を示します。木星(B夫人)は危険なサインの老いた度数(29度)に入っているので、彼女は危機的な状況にあり、状態の変化を経験しようとしています。肝臓のナチュラル・ルーラーでもある木星は、双子座を過ぎて蟹座に入ろうとしています。29度にある彼女の肝臓(木星)は「我慢の限界」にあり、B夫人は肝臓移植を受けようとしています。チャートはラディカル(有効)で、この象意は現在の状況にかなりぴったり合っています。

 木星は第10ハウスで強くなっているので、前向きな指標です。双子座の終わりにいる木星は火星(手術)のタームに入っています。第2ハウスは、第7ハウス(B夫人)から数えて8番目のハウスなので、B夫人の手術のハウスになります。第2ハウスに天秤座があるので金星が手術のプライマリー・ルーラーになり。第2ハウスの冥王星は手術の副ルーラーになります。……彼女の副ルーラーの海王星は、金星(手術)とのトラインに相互にアプライしています。このトラインは前向きな結果を示しています。彼女の副ルーラーである月は、双子座0度35分でクリティカル・ディグリー(危険な度数)に入っています。これはあたかも私たちには確証が必要だと言わんばかりに、彼女の危機的な状態を裏付けています。月は金星とスクエアを形成するので、障害や問題が克服されることがわかります。月は、のちに手術の副ルーラーで合併症のナチュラル・ルーラーでもある冥王星とクインカンクス(150度)を形成し、必要な調整と再構築を暗示しているので、肝臓移植と手術後の回復を象徴することになりそうです。月が最後に作るアスペクトは木星とのコンジャンクションで、これは前向きな結果を暗示しています。

 好ましい結果と辛い結果の指標が混在しているので、このチャートを総合するのは難しそうです。事態の成り行きは、この混在したチャートの特徴に当てはまっていました。手術は成功しましたが、B夫人は術後に多くの合併症(冥王星)を発症したのです。彼女は3ヶ月以上病院に残って抗生物質による治療と集中的なリハビリを受ける必要がありました。11月初旬になってようやく退院したので、肝臓移植は成功したといえそうです。

 伝統的なホラリー占星術では、このチャートの解釈が異なるかもしれません。リリーは「病人に関する質問では、病気の関係者のシグニフィケーターとしてアセンダントとそのルーラー、そして……ホロスコープのルーラー(ホロスコープ内で最もディグニティの高い天体)を使いなさい」と言っています。上昇する乙女座(病人の介抱を表すサイン)は、看護婦と医学的問題に関する質問に適しています。B夫人(アセンダント)のルーラーである水星は、病院を司る第12ハウスに入ろうとしています。最高のディグニティを得た太陽が「そのホロスコープ(天宮図)のロード(ルーラー)」です。この観点からするとチャートはラディカル(有効)のようです。

 ……月はチャートで事柄のおおまかな流れを示します。月は、次に第12ハウスの金星とスクエアを形成(辛い入院を示す)し、それから彼女の希望や願望を司る第11ハウスの太陽とセクスタイルを作ることから、前向きな結果を示唆しています。さらに、最もディグニティを得た「そのホロスコープのルーラー」である太陽はB夫人を表します。太陽は手術を司る第8ハウスと入院を司る第12ハウスのアルムーテンで、手術(8室アルムーテン)や入院(12室アルムーテン)、希望、願望(11室に在室)と病人(ホロスコープのルーラーは病人を示す)を結びつけています。太陽が高いディグニティを得ているのは、これらの事項がうまくいくことを示しています。(『ホラリー占星術  入門と実践』408~411頁)

 これだけでも十分すぎるのですが、アセンダントでその質問の状況そのものを見るという読み方を一応書いてみると、まずアセンダント乙女座は医事に関する質問に合っていて、あるいは心配・慎重という意味もありそうです。アセンダントルーラーの水星は12室カスプに近くて、さらにアイヴィ・ヤコブソンは「11室は計画や予期せぬこと、形にならないもの(希望・願いなど)」と書いていて、これってたぶんですが“広漠無辺でいろいろなものが傾覆したり混茫したりしている空間(その中には明るい希望やどうなるか分からないものも含まれている)”みたいな感じだと思うので(実際、11室にある天体は凶事のイベントチャートなどでは予期せぬ霹靂みたいな意味になっている例が載っている)、この質問もどちらかというと11室+12室って、「どうなるか分からないけど、閉じ込められるところに傾きつつある」みたいな広いところから暗いところに落ちていく縁の近くみたいな場所なのかも……みたいに読めそうです(どうでもいいけど、プラシーダスなどのハウスシステムって、この歪みや曖昧さのニュアンスが繊細で楽しい気がする。ホールサインはもっと古朴でくっきりしている印象)。

 さらに1ハウスからみて8つ目(手術)の8室ルーラーは火星、火星は12室に居ます。水星は太陽(12室ルーラー)と合で、さらに火星(手術)とサウスノード(土星の性質に近く、遅滞などを示す)は合だったりと、手術が上手くいくかを訊いたのに「入院する」みたいな答えが返ってきている感があります(書いていて怖いな……)。

 さらに、7室(血縁関係のない他者)をB夫人として読んでみると、アセンダントルーラー(7室ルーラーのことです)は木星or海王星、木星はデトリメント、海王星はフォールにあって(海王星は山羊座でフォール、蟹座で高揚という説がある。ちなみに天王星は牡牛座でフォール)、魚座の混乱・悲しみも今の様子に合っていそうです。

 さらに、海王星は土星と合で、土星は5室・6室ルーラーを兼ねています。ここでの5室(7室から11個目)は予期せぬ物、6室(7室から12番目)は入院という意味が近そうなので、手術はやや危なっかしい面もある……ということかもです。土星なので、やや深刻・長引くという面もありそうですが。

 7室から見て8番目(手術)のハウスは2室ですが、ルーラーは金星で、金星は12室(7室から6つ目)に入っています。6つ目のハウスは病気で、ハウスルーラーの太陽とディスポジターの水星が合(7室から5つ目のハウスは、多少運任せな面がある的な意味かもしれない)……というように、アセンダントから読んでも7室から読んでも、6室(病)・12室(閉じ込められる)が螺旋みたいに結び合っているような形になっていたり……(書いていて不穏だけど、出来るか否かの答えとは別のものが出るときは、却ってこういう読み方でチャートの雰囲気を感じる方が読みやすいときもありそうです。どちらかというと切羽詰まったチャートのほうが全体の雰囲気が濃くなりやすい印象です)

 やや外れるけど、火星はアセンダントからみて8室ルーラーだけど、同時に3室ルーラーも兼ねていて(金星は7室からみて3つ目のハウスのルーラーを兼ねることになります)、そうすると3番目のハウスと8番目のハウスのルーラーは、12室or 6室に居るって、8室は手術・6室は病・12室は入院だとすると、3室はたぶん行き来することだと思ったり……(「……」が多いな……と思うけど、こういうことを書くときって、……多用しがちになる)。

貴族の贅沢

 これはエジプトのアレキサンドリアでパルコス(ヘレニズム時代の占星術家)が分析したもので……典型的な5世紀のホラリーの質問です。質問者は大金をつぎ込んで新しいペットを買う前に、子ライオンを飼い慣らせるかどうか知ろうとしました。……

 5世紀のルールを用いたパルコスは、獅子座2度のアセンダントが子ライオンに関する質問にうまく適合していると主張しました。金星が第1ハウスの獅子座で上昇し、木星は喜びを得る善い神霊の第11ハウスに位置しています。この2つの吉星のハウス位置から、ライオンはなつくと考えました。さらに、質問者の副ルーラーである月が、質問者のペット(第6ハウス)のプライマリー・ルーラーである木星とじきにトラインを作ります。木星は、第12ハウスで表される大型動物や野生動物のナチュラルルーラーでもあります。パルコスは、月と(彼の計算上の)パート・オブ・フォーチュンが、西に没しようとする水の性質を持つサインの水瓶座に入っていたことから、ライオンは船で外国に行くだろうと言っています。……

 コンピューターのチャートでは、魚座2度にパート・オブ・フォーチュンがあります。パルコスは入手した情報を基に自らパート・オブ・フォーチュンを算出しています。5世紀の計算では、パート・オブ・フォーチュンは水瓶座28度に位置しました。パルコスは、月が第1ハウスの金星(月の送り手)とのオポジションから離れたばかりで、第11ハウスの双子座(旅行)にある長期旅行のナチュラルルーラーである木星(月の迎え手)とのトラインを形成しようとしていることから、ライオンが外国にいくと考えたのです。(『ホラリー占星術  入門と実践』411~413頁)

 個人的に「アセンダント獅子座が、ライオンを飼うことへの質問に合っている」という読みが面白くて、この本で出てきたチャートの中で最も気に入っているものなのですが、1室の獅子座に金星があるという状態って、質問の状況(1室)と貴族の贅沢っぽい感じがよく出ている感じがあります。

 アセンダントルーラーの太陽は、12室(ここではたぶん“流離”の意)で、インターセプト(箱の中)にあって、さらに12室カスプは双子座(移動の星座)です。ついでに6室(ペット)のルーラー木星は、9室(遠い旅。水星座なので船かも?)のルーラーも兼ねていて、ペットのライオンが遠くから送られてくることになりそうです。

 ちなみに水星と木星はミューチュアル・レセプションで、水星は3室(輸送)・12室(ライオンは仲間と離れて“流離”)、木星は6室と9室なので、この二つはかなり強く繋がっています。金星は4室・11室(故郷&仲間)ルーラーでもあり、金星と月(Ascルーラーのディスポジター&12室副ルーラー)は180度で分離して、9室ルーラーの木星と120度になるので、故郷の群れを離れて、ペットとしての旅を喜ぶ……みたいに読めるのかもです。

 まぁ、見るからに良いチャートはここまでしなくても読めそうですが、ハードアスペクトがあって判断に悩んだり、あるいは吉凶混在のようなチャートのときは、こういう感じでアセンダントルーラーやハウスの意味を重ねるようにしていくと読みやすいかも……みたいな記事です。

 ちなみに“華山十大未解の謎”とは、中国の陝西省にある名山  華山(形が遠くからみると花びらのように峰が並んでいることから。その岩壁は削ったように鋭く、とりわけ飄忽として不思議な伝承が多い)の中で、特に不思議な十の話を併せて呼ぶもので、こんな感じの話です。

謎の字
 華山の蒼龍嶺の上には「雲海」と書いた碑があって、その隣には○に・を入れたものを田の形に四つ並べたものが彫ってあり、どのように読むか分からない。ある人は昌・明をどちらから読んでも読めるように書いたものと云ったり、ある人は陝西方言で「jiao(太陽の光がぎらぎらと明るい)」と云っている。

仰天池
 華山の落雁峰という峰の上には、仰天池という小さい池があって、その大きさは1mほどの不規則形の岩の凹みで、どんなに晴れていても涸れることはなく、どんなに雨が降っても溢れることもない。噂では、太上老君(神仙の老子)がこの池の水で、金丹を練るという。

黒龍潭
 華山の南峰には黒龍潭という1mほどの小さい池(水たまり)があり、その水は黒く濁っていて黒龍潭と呼ばれる。その水はあるときは墨の雲を注いだように黒く、あるときは底が見えるほど清澈(すきとお)っていて、清・呉震方『説鈴』には“龍がいれば水は黒く、龍がいないときは水が澄む”という。

雲天弧光
 華山の北峰の天梯という岩の上には、夏から秋にかけての雨の明け方に、空中での放電のような幾筋かの光が、夜でも岩の模様がみえるほどに眩しく光っていることがあり、これは閃電の光だとされているが、雷の音は聞えないので、これが何なのかわからない。

游山神灯
 華山の玉女峰には、夜になると峰や崖のところを、三々五々の灯光が歩いていくようにみえることがあり、これを神灯と呼んでいて、明・李応祥『雍勝記』には「華山の白羊峰では、三元八節(上中下元と春分・立冬など)には三つ五つの神灯がみえて、それを見ると長生きできる」とある。

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ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

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