アイヴィ・ヤコブソン

アイヴィ・ヤコブソンのダークムーンリリス研究と月の欠損

 最近、アイヴィ・ヤコブソンのダークムーンリリスについての本(『The Dark Moon Lilith in Astrology』)を読んで、その概要と個人的に思ったことなどを書いてみます。

 まず、この本で紹介されている「リリス」は、ダークムーンリリスのことです。なので、通常はリリスと書くとブラックムーンリリス(true)をあらわすことが多いですが、この記事に限っては“リリス=ダークムーンリリス”だと思ってください(この記事以外では、このブログも“リリス=ブラックムーンリリス”です)

 というわけでなのですが、ブラックムーンリリスは“その人の秘された欲求&ごく一部の人に刺さる魅力”、ダークムーンリリスは“その人の最も恐れて抑えている破壊的な衝動”みたいに解釈されていることが多くて、ブラックムーンリリスは結構色々な人が取り上げています(ダークムーンリリスはあまり話題になっていない感があります)

ダークムーンリリスと自己解離の欲求

 ということで、アイヴィ・ヤコブソンのダークムーンリリスの解釈はこんな感じです(同書1~6頁の内容を、かなり意訳したり順序を混ぜた感じで書いてます)

 リリスは、海王星や12室の負の面に似ていて、ぐずぐずと腐らせるような自己破壊・誤ち・意図的な愚行などに近い。

 その誤ちは、はっきりと見えていたはずなのに、何故か気づけないもので、リリスのあるハウスについての事柄は否閉されていたり、失望して鬱屈させるor悲惨な破局になって、ぐちゃぐちゃぐだぐだに崩れていってしまう。
(もしリリスが居なければ、そのハウスはこの人にとって人生を発展させるものになっていたのだろうけれど)

 リリスは暗い誘惑・蠱惑からの背信(“これだけ私のために動いても、現実には何も変わらないとは愉快愉快……、おぉ、惨めじゃのう……”みたいな笑)、奇妙なものに影響を受けてしまうこと、妄想と致死的な誘引、どっぷりと染まった強迫観念、惑わされて腐敗させられていくような恐しい状態(リリスに惑わされている人は、ぐずぐずに腐って崩れたいと思ってしまう)、毒殺・毒害、堕胎と死産、奇妙な廃疾(一見すると診断するのが難しい)……などの意味がある。

 リリスはもともとアダムの妻で、ヘブライ語では“夜”のこと。聖書では“夜に磔々(キーキー)と鳴く梟”“夜に小さい子供を襲う妖怪”……というふうに描かれる。これはリリスがアダムと争って別れたのちに、イヴとの間にできた子供たちを罠にかけたり苦しめたりすることに依っていて、上に書いたような自己破壊的なイメージ・崩壊・蠱壊や根深い廃疾を植えつける等は、そこからの派生象意(“汝の国の人、一日に千頭縊り殺さむ”)。

 リリスは茫乎としていて捉えがたく、ぼんやりとして頼るものがないような孤独のときに現れては人間を引き寄せるように誘うけれど、それに従ってしまうと私たちはリリスに従ったことを怨みながら生きることになり、凶運の中に誘い込まれてしまう。

 アダムはリリスとイヴの二人の妻がいたように、人はみなリリスの子でもあり……

(ここでのリリスは、すべてダークムーンリリスです)

 これを見ると、ダークムーンリリスって、一種の“メンヘラ性”だと思っていて、蠱壊・汩惑(汩:沈没)・蕩心・蕪没・堙滅・糊涂(ぐずぐず、ぐだぶつな)……みたいな漢字が近いと思います。

 この雰囲気を思い出させる曲って、個人的にはこれだと思います。

「……癒えない傷に無意味な液体を流し込んで、身体は重症になってどうやら手遅れ……、
亡命して生命を蹂躙して、幸福に浸って帰らぬ医療廃棄物になって、
実世界では生きていけないから、悪い自意識の塊になって、貴方の血肉になれるなら、
生活は残骸になって、正常は廃疾になって
錆び切った感覚で乾杯を……」

的な自己解離の欲求が、アイヴィ・ヤコブソンのダークムーンリリス観らしいです(かなり無理やりだったけど)。

リリスのチャート

 そんな感じで、今度はアイヴィ・ヤコブソンがあげているリリスのチャート例を載せてみます。

 まず、アイヴィ・ヤコブソンはリリスのあるハウスによって、

 アングルにリリスがあるor目立っていると、(外からみえやすい場所なので)異性への無意識なコケティッシュさや親しみやすい態度になって、同性の者を出し抜いたようにみえて疎まれることが多い。その媚態横生する様子は生まれついてのものなので、忠告しても抑えられるものではない。

 逆にリリスが目立たないホロスコープだと、その人の生活は静かで慎み深く上品なものとなり、無意識に異性を魅了したりすることはない。

 リリスがアングルにあると、その人自身・家・結婚・仕事などのハウスにもハードアスペクトになってしまうので、それらの大事なものがみな否定されて壊されてしまう(ホールサインアスペクト的な感覚をハウスでみています)

 リリスがサクシーデントにあると、その人の財・家の財・配偶者の財・仕事の収入などが否定されて崩れていくので、財について悪いことが起こる。

 リリスがキャデントにあると、キャデントはアングルの裏舞台のような支える場所なので(cadent:落ち窪み)、見えないところでの機能がぐずぐずに腐っていることになり、腐敗した泥が滀まった窪みにいつまでも引き寄せられて抜けられなくなる。(同書9~13頁)

 ……怖いです。ちなみに、個人的には「リリスが目立っているとコケティッシュで無意識な媚態があって……」あたりは、現在ではブラックムーンリリスに近い意味だと思うけど、アイヴィ・ヤコブソンはダークムーンリリスしか書いてないし、「メンヘラ的な危うさで惹き付ける」みたいな解釈もできるかもしれないので、一応のせておきます。

 というわけで、リリスが出生図のキャデントにあった例です(Astrodienstで出したチャートだと、少しリリスの度数が違うけど、ヤコブソンの解釈の紹介ということでそのまま載せます)

 これはヘルマン・ゲーリング(第二次大戦期のドイツの政治家)の出生図。リリスがキャデントにあって、8室(死)のルーラーの月が死の星座(蠍座)の自滅的な魚座デーカンにあって、さらに12室(自殺)ということで、生まれついての自殺的な面がみえる。

 実際、第二次大戦でドイツが敗れて、ゲーリングは死刑になる前日に毒を飲んで自害している。リリスのアンティシアは牡牛座15度で6室(病・身を養うこと)にある。(同書13頁)

 ……アイヴィ・ヤコブソンの出している例は、かなり古典占星術風なところがあって、現代からみるとすべてがそんな風になるわけではない……と思える気もしますが、とりあえずリーディングの例として感覚が掴めれば……ということで載せています(まぁ、こういう例しか載ってないのですが……。でも、この“モダンの用語・技法で、古典風の解釈をする”というのがヤコブソンの特徴だと思います)

 ちなみに「リリスは、みずからの入っているハウスだけでなく、リリスとハードアスペクトor合になる天体がルーラーになっているハウスも、ぐずぐずと蠱壊させてしまう(同書19頁)」とあって、そういう例を載せてみます。

 これはアメリカが、第二次大戦でドイツに対して参戦したときのチャート。リリスは財をあらわす2室のカスプに重なっていて、さらに4室(国土)のルーラー太陽と180度になっている。

 太陽は8室(死)にあるので、国土が死・壊乱の中にあって、しかも財を破るリリスとハードアスペクトなので、国の財や武器などが多く損なわれることをあらわしている(同書19頁)

 これはイベントチャートの例ですが、リリスはホラリー・マンデーン・リターン図(ソラリタ・ルナリタ)・四季図(春分図・夏至図……)など、どんなチャートでも大体は同じように読めるとしています。

 もっとも、リリスだけでは潜在的な危うさ、という感じなので、他の天体の状況とあわせて読んで、本当に危ないものが重なっているときだけ、リリスは実際に出てくる……としています。

 ……というわけなのですが、この本に書いてあるリリスの例って、どことなく自己破壊感があまり出ていない例が多いので、別のところから一つ長めのリーディングを載せてみます。

 これは自殺への想いを抱きやすい女性のチャート。なぜなら、アセンダントルーラーの水星(考えていること)が自殺の12室にあり、水星はPOFと90度、さらに太陽は海王星(8室のルーラーで、自殺の12室にかかわる天体)と合なので。

 さらにMCにはアルキュオネが合になっているので、10室的なことについて泣きたくなることが起こるらしく、MCは太陽(12室ルーラー)のアンティシアに重なる。さらにいうと、Ascルーラー水星も12室に入っている。(アイヴィ・ヤコブソンは12室or魚座or魚座のデーカンのPOFを「不幸のパート」と呼んでいるので、)水星は不幸のパートと90度になっている。

 これだけではまだ然程悪いわけではないが、さらに4室(墓)ルーラーの冥王星(蟹座4度)が、8室ルーラーの木星(双子座4度)と海王星(獅子座4度)のちょうど間に入っている。MC(牡牛座28度)はソーラーアークで36度動くと、ちょうど冥王星に重なることになる。これはソーラーアークで36度動いたときに大変なことが起こることを感じさせる(ソーラーアークは次からSAと書きます)

 尤も、ここからも危うい兆候が重なっていて、まずSA火星は36度動くと獅子座4度にあって8室ルーラー海王星と合、もう一つの8室ルーラー木星はSAで36度動くと蟹座11度にあって、これは月とダークムーンリリスの間の度数と90度になる。(ダークムーンリリスは“気持ちが弱っているときに幽霊のように現れ、ぼんやりと暗いものに惹き付けられて生きるように誘うもの”)

 SAの月は蠍座18度にあって、これは「呪われたサインの呪われた度数」と云われていて(サーペンティスのこと)、冥王星と135度、さらにAscルーラー水星はSAで乙女座22度にあって、天王星と150度になっている。

 SA火星が、11室の太陽(獅子座で強い)と重なっていたときは、彼女はラスベガスで良い仕事についていたが、SA火星が太陽を離れて、獅子座でデトリメントになっている土星と合になる頃になって次々と仕事を変えるようになり、最後のほうは収入もなくルームメイトに頼るようになっていて、海王星の“仮名で生きるもの・追い出されている”という様子になっていた。

 彼女は異様なほど困惑して、火星と海王星の合のように落ち着かず不安になって、ある夜に睡眠薬の大量摂取で自死してしまった。海王星はドラッグで、五日間眠り込んでそのまま起きることはなく、これはSAのMCが冥王星(死のナチュラルルーラー)と合、海王星(ドラッグ)と30度、月(感情)がサーペンティスと合になったことにも重なる。(『Here and There in Astrology』96~99頁)

 とても複雑なリーディングです……。ソーラーアーク、ミッドポイント、リリス、エッセンシャル・ディグニティ、ナチュラルハウスなど、すごく色々な技法が出てきていて流れを追うのも難しいですが、「8ハウス(死)のルーラー木星が、ソーラーアークで36度動いたとき、月とダークムーンリリスのミッドポイントと90度……」というところがリリスです。

 このとき、ソーラーアークで36度を加えると、SA火星はもう一つの8室ルーラー海王星と合、SA月は蠍座18度(サーペンティス)と合、SAの10室カスプは冥王星と合、SA水星(Ascルーラー)は天王星と150度、というように、凶星との合orハードが集中している感があるので、リリスの危なさが出てきやすい……と読んでいます。

 リリスは自己破壊の欲求なので、SA火星n海王星合(激しい混乱と衝動)、SA10室カスプn冥王星合(仕事方面での破壊)、SA木星(8室ルーラー)とn月リリスの中間点が90度(自己破壊的な感情と死)などが重なって、生まれついての月リリス合が強調されやすい……となるらしいです。

 こんなふうに、リリスは心が毒に染まったように自己破壊的な衝動に飲まれてしまう様子をあらわす感受点としています。

暗い月に堙もれて

 というわけでなのですが、ここまで読んできて「妄想と致死的な誘引、どっぷりと染まった強迫観念・リリスのあるハウスについての事柄は否閉されていたり、失望して鬱屈させるor悲惨な破局になる」って、何かに似ているような気がする……と思ったら、一時期前に占星術界隈でかなり話題になっていた“月の欠損”です。

 一応知らない方のために書いておくと、“月の欠損”とは、従来の月星座は、私生活の場でみせる姿・個人的な安心感のあり方……みたいに解釈されていたけれど、実際は

・月は7歳まで(月の年齢域)に得意だったことなので、実際には大して得意ではないが、自分としては上手いと思い込んでいる(なので、月は他人からみると“欠けていること”を表す)
・なので、月で表されることをしていると人生は停滞する(故に太陽星座を重んじる方がいい)
・月で表されることは一度手に入れても、いずれ全部失うことになる

……という解釈です。

 もっとも、これについては色々な批判もあって、大体の批判派の内容をまとめるとこんな感じです。

・伝統的な月の解釈からあまりに外れすぎている
・月が10室ルーラーの場合は、月は仕事にかかわるのに、一概に月を無視するのは難しいなどという例外がかなりある
・体感として月はそこまで害悪ではない。特に“全部失う”はさすがにありえない

 個人的には「月は安心材料なので、ある程度の安心感の為には全廃するほどではないと思うけど、安心材料の為に他の全てを犠牲にしてでも安心材料をもとめてしまうと、一種の強迫観念化して、他のものが崩壊していくことになる」的な雰囲気でいいのかもですが(こんな書き方では絶対に売れないけど笑)

 でも、マドモアゼル愛先生の『月の教科書』25頁前後に“月は不幸や苦しみを受け入れているような、懐かしさと遣る瀬無さ、悲しい安らかさ”のような表現って、いわゆる月星座よりも、さきに書いたダークムーンリリスの雰囲気に似ている感があります。

 ……というわけでチャートを出してみたのですが、恐れ多くも少しだけ読ませていただきます(まぁ、こんな弱小ブログ、だれも読んでないと思いますが笑。それにしても、月・海王星・冥王星のトランスレーションの緊密さがすごいです)

 まず、月とダークムーンリリス(Waldeのこと。ダークムーンリリスを観測したという天文学者ウォルテマスの名から)が合になっていて、しかも月は9室ルーラーで6室にあります。9室は終わらない思索で、それが6室にあるので、そのような思索が一種の苦しみ(6室)として出てきて、しかも月に関することはどことなく自己破壊気味(ダークムーンリリス合)というか、本来なら実になるなずなのに、何故かぐずぐずと蠱壊してしまうことなのかもです。

(アイヴィ・ヤコブソンの云う“リリスのあるハウスや、リリスと合orハードアスペクトの天体がルーラーになるハウスは、リリスのせいでその人を自己破壊・自己蕪没に引き込んでしまう”みたいな)

 ところで、この本には、幾つかリーディング例が出てきたのですが、月に関することでその人が身を亡ぼすか、月の執着から上手く逃れられたかということが書かれています。カルロス・ゴーン、三島由紀夫は月に引きずられて人生を蠱壊させられた人、寺山修司、出口王仁三郎は月の執着から上手く逃れられた人……というふうに出てきます。

 というわけで、この四人(ハウスは不明)のチャートを出してみると、ある特徴が出てきます(要因はもっと他にもあるだろうけど)。

 まず、カルロス・ゴーンさんからです(1954年3月9日生まれ、有名人を悪く云うリーディングは好きじゃないので、本当に最小限の読みにとどめます)。主な特徴はこんな感じです。

・月は牡牛座(愛先生は“財を好む、でも長く持ちつづけられない”と読んでます)
・金星(牡牛座のルーラー)は魚座末期度数
・リリスは射手座の末期度数で、金星と90度
・海王星は天秤座の末期度数で、天秤座海王星と魚座金星のミューチュアル・レセプション
(アイヴィ・ヤコブソンは“ミューチュアル・レセプションは互いの度数を保ったまま、もとの星座に戻る”と読んでいます)
・双子座木星と魚座水星は、互いにデトリメントの星座にいる状態でミューチュアル・レセプション

 まず、ホールサイン的に読むと、月は牡牛座に重なるハウスにあることになります。なので、月のあるハウスのルーラーは金星です。金星はリリスと90度、さらに、金星のあるハウスのルーラー海王星は、ミューチュアル・レセプションで自分の星座(魚座)に戻ると、リリスと90度です。

 なので、金星(個人的な快楽・享楽)のあるハウスのルーラーも、リリスとハードアスペクトをもつことになるのかもです。さらに、金星のあるハウスのもう一つのルーラー木星は、双子座にあってデトリメントです。

 しかも、魚座にある水星もデトリメントになって、水星木星ミューチュアル・レセプションなので、「截然としない(魚座水星)」と「こせこせした緩さ(双子座木星。かなり悪く出るとですが)」の混ざり合いでつるつるぬるぬる……みたいな意味なのかもです。

 リリスは射手座なので、やや無謀で気の大きい形での“暗い誘惑・致死的な誘引”が、金星(牡牛座のハウスのルーラー、魚座のハウスの副ルーラー)に絡んでくることになりそうです。

 ちなみに、三島由紀夫さん(1925年1月14日生まれ)のチャートでは、乙女座で月とリリスが合です。愛先生は、乙女座的な過剰で強迫的な潔癖観念が、いきすぎた異物嫌悪と国粋主義に傾いていき、体制を乱すものは日本刀で切り棄ててしまえばいい、という思想に至ったとしています。

 でも、これも乙女座月の人がそこまで極端に流れるかというとそんな例の方が少ないので、どちらかというと「妄想・どっぷりと染まった強迫観念・悲惨な破局・奇妙な廃疾」などのリリスの意味のほうが出ている気がします。

 一方で、寺山修司さん(1935年12月10日)は、当初は短歌の創作で有名になったけど、その短歌は既存の作品を、双子座月的に切り貼り・寄せ集めのような作風だと批判を受けて、その後は射手座太陽にあらわされるような前衛演劇に路線を変えたので、月の破局を免れた……と愛先生は読んでいます。

 ちなみに、寺山修司さんは月・月のハウスのルーラーと、ダークムーンリリスの合orハードは無しです。

 同じく、出口王仁三郎さん(1871年8月27日生まれ)は、月は山羊座で、大きい教団組織と荘厳な神廟(山羊座らしさ)が失われても、それに執着しなかったから月による滅びを逃れた、と読んでいます。この方も、リリスは水瓶座にあって、月やそのハウスルーラーへの合orハードは無しです。

 ここまで読んでみると、(プラシーダスなどでハウスルーラーが出るともっと変わるのかもですが)月の誘惑から逃れられなかった人の例が、いずれも月or月のあるハウスのルーラーが、ダークムーンリリスと絡んでいる人になっている気がします。

 もしかするとですが、すごく恐れ多いことを云うと、マドモアゼル愛先生は、月とダークムーンリリスが合になっていて「月についてのことがみなぐずぐずと沈んでいくような感覚」があって、個人的な感覚として混ざって感じていたのかもと思ったり……。

(この感覚、なんとなくわかる気がして、太陽とtrueブラックムーンリリスが合なので、いわゆる太陽星座の意味がいまいち実感できなくて、太陽ってむしろドス汚い欲望が、ある程度は恥ずかしくないように妥協して形を変えたものみたいに思えるのですが、こういうことを太陽星座について書いている人ってほとんど居ないので、太陽とブラックムーンリリス合ゆえの個人的な感覚らしいです……)

 ところで、アイヴィ・ヤコブソンはリリスの恐しさは書いていても、リリスへの対策とかは殆ど書いてないのですが、

 ヤコブソンのチャートを出してみると、木星とリリス合がまずあります。Ascルーラーの月は、木星とミューチュアル・レセプションで、月はもとの度数を保ったまま牡牛座に戻ると、やはりリリスと合です。

 しかも、Ascの蟹座で高揚するのは木星&海王星なので、木星はリリスと合、海王星は月と90度……みたいになって、けっこう海王星とリリス(負の海王星に似ている)に苦しめられたのかも……みたいに思えてきます。

 やや話が逸れるけど、ヤコブソンの本で海王星のことを書くときの文采の多端で多変を窮めることがすごく魅力的なのですが、日頃からけっこう暗い海王星的な感情(月と海王星ハード&月と負の海王星合)への観察が多かったのかもです……。

 一応、リリスに飲まれないためには

 リリスがダークムーンリリスとして天体化されているように、イヴも同じく天体化されていて、新月から三日月になっていくときの月は、太陽から現れていくときの生成の力の象徴で、それはいずれリリスを超えることになる。この相剋は、外にいる人間よりも、内なる自己へ向けられる(同書3~4頁)

とあるので、遠回しに太陽をメインにして、月の内界を太陽で育てていく……という意味だと思ってます。

(前に出した『Here and there in astrology』3・7頁では「月はその人の感情が“経験する変化”をあらわす。太陽は、月・Ascで表される性質とは別に、その人の主体性による人生すべてを示す」としていて、たぶんですが、太陽が主体となって動いて、月の内界での感性を豊かに育てていく……ということだと思います)

 あと、アイヴィ・ヤコブソンの本の雰囲気として、機知縦横にして幽緲な文体と、やや冷淒なリーディングがある気がします。このどことなく因循的でぞっとさせるようなリーディングって、リリスに何重にも絡まれる感情(月は魚座の魚デーカンなので、悲嘆的でやや幻惑的)と、それに至るまでに何とか抜け出す方法を探していくときの多彩で神技的な切り裂くようなリーディング(水星火星ミューチュアル・レセプションに海冥合)、という雰囲気です。

 太陽のある9室ルーラーは木星で、木星もリリスと合になっていたり、ホールサイン的にみて太陽のハウスルーラーを火星とすると、火星は海王星・冥王星(破壊と幻惑)と合だったり、この陰翳の雑ざり合った雰囲気が、ダークムーンリリスっぽい不穏な魅力なのかもしれないけど。

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA