ハウス

キャデント・アングル・サクシーデントの強さ

 よく占星術のルールとして、アングル:強い、サクシーデント:まぁまぁ、キャデント:弱い……みたいに云われるけど何故?とか思っているかもしれないので、個人的に思っていることを書いてみます。

(アングルは天の基軸だから……or天に喩えると特に目立つ場所だから……みたいな説明だと、個人的には「でも人間は違うかもしれないけど……?」とか思ってしまうので、そういう方面からの思っていることです。ハウスの意味はモダン寄りです)

アングル

 まず、ハウスの三区分による強弱って、“その人の本質的な特徴か否か”の違いだと思っています。

 アングルで示されることって、わかりやすい中枢軸(骨格)・硬い伝記で書けること、な気がします。たとえば

~~は……群――氏の出身で、その性格は曠放で自在、○○の位についていた。妻は●●氏の人で(以下略)

みたいな感じで、出身地と出身家系(4室)・本人の性格(1室)・外向きの地位(10室)・結婚相手(7室)……的な感じです。

 こういう部分は、外からみてもわかりやすい特徴なので、アングルに天体が多いと公的な面からみても特徴が掴みやすい雰囲気になりそうです。あと、7室の結婚相手というのもあまりにも短絡的すぎるので、“その人ときれいな対を為すような、対照的なもの”“どのような外の世界と関わるか”……が7室だと思います。

キャデント

 キャデントのハウスは深く話し込んだり、その人の本を読み込まないと出てこない一面、というのが近い気がします。

“キャデント”は「落ち窪んでいる」という意味なので、アングルからみて落ち窪んで蔭に入っているところです。もっと砕けていうと「アングルをつくった背景or周辺情報」がキャデントかもしれないです。(ハウスのグループ感は、12・1・2、3・4・5、……というふうに分けるのが近いです)

 たとえば、3室は兄弟親戚・周辺の地域などですが、4室(家)の周りにあったものが3室です。周辺の地域の様子は、その人が育った家のことに比べれば、あまりその人の本質的な情報ではないです。

 でも、3室に天体が多かったり、4室ルーラーが3室に入っていたりすると、兄弟から様々な影響を受けるor住んでいた地域の風土に深く染まっていたり、周りの風土などと関係の深い家で育ったり……みたいに読めそうです。

 なので、別にキャデントに入っている天体がその人の本質ではない、というわけではなくて、ふつうは周縁部に追いやられがちな要素が、深く関わっている人もいます。

アングルって、その人本人の内側から出てくるものという印象があります。なので、1室に天体が多いとその人本人の性格が複雑な色を帯びていたり、10室に天体が多いと仕事として多くのことを為そうとしたり……みたいな。一方でキャデントのハウスって、本人から少し離れて外にあるものに関わることを示していそうです)

 あるいは、9室だとその人がどのような思想をもっていたか、どのような遍歴をしたか(10室の成果として形にする前に、どのような内面での遍歴を経ているか)を示す感があります。通常、詳しい学問や思想の内容(9室)よりも、わかりやすく整理されて形になれたもの(10室)がその人の特徴として描かれがちですが、その背後には多くの遍歴・探求があったりします。

 人によっては、公事に関わるよりも、学問や思索を深めることに重きを置いている人もいるし、そういう人の本当の功績を感じたいと思ったら、表向きに見える部分よりどういう思索をしてきたかを深く読み込んでいくor時間をかけて聞いていくようになります。

(すごく誤解の多い表現をしてしまうと、10室に天体が多い人は“悩むより形にしていく”、9室に天体が多い人は“どういう形が理想かを延々悩む”みたいな関係です……。10室は赫々たる功業、9室は遠い探求みたいなイメージ)

 もしくは6室(人と会う前に、裏側に隠しておきたい苦役的でバタバタする面倒事)だと、“その人が煩わされたこと”というのは、あまりその人の内側から出てきた枢要的なものではないです(少なくとも、その人の性格:1室や、その人と対になる対照的なもの:7室などの、本人そのものに基づく特徴に比べれば)

 12室だと、1室(表にみせている顔)の裏にある隠れた不安なので、一見して感じられる雰囲気(1室)の蔭に落ちくぼんでみえづらいものになります。でも、12室に天体が多かったりすると、自分でもみえづらい面や心の奥底に溜まった澱のようなものに触れる時間が長かったり、そういうものに向き合ったり……という意味で、じっくり話し込むと色々な面がみえてくる人になりそうです。

 なので、キャデントのハウスで描かれる特徴って、その人の一見してわかりやすい特徴ではないけど、外からみえづらい内面や裏側にどういうものがあったのかを示している、という意味で“弱い”のかもです(でも、アセンダントルーラーだったり、多くの天体にレセプションを通じて影響力をもっていたりすると、そういう蔭にある一面が意外と重要なものだったりしそうですが。尤も、アングルの特徴だけでは硬い記述になりがちなので、キャデントの屈曲や陰翳も大事だとは思います)

サクシーデント

 サクシーデントは「アングルを継いでいる」の意なので、アングルの延長線上にあるもの、だと思っています。(キャデントよりは外からみえやすい)

 あと、アングルは強い、サクシーデントは“まぁまぁ強い”というのが興味深い特徴で、アングルに付随してそこそこ大きく見える要素がサクシーデントです。

 たとえば、2室(財産・もっているもの)は、1室(みずからの身一つ)の周りにある物事です。なので、外からみると「あの人って~~な性格だよね、……っぽい雰囲気だよね(1室)」につづいて、「あの人って――を持っているよね」が2室です(本人そのものの周りにあるもの)。持っているものは、別に本人そのものの特徴ではないので、1室よりは少し軽めです。

 でも、「あの人って、蔭では○○な不安を感じているらしいよ(12室)」みたいな話は、そうとう深く通じている人しか知らないので、すごく目立ちづらい(アクシデンタル・ディグニティが低い)です。

 同じく、「あの人は、蔭では●●を片付けるのに煩わされている(6室)」とかは、その人がどのような外界と関わっていたか(7室)よりも、一瞥しただけでは感じ取りづらいです。でも、「あの人は~~と関わった末に、こういうものを受け継ぐ仲に入ったらしい(8室:遺産・共有物)」とかは、7室に付随して出てくる話になりそうです。

 ただ、その人が“他者との関係の末に受け継いだもの”も、やはり本人そのものに基づくものではないので、アングルに付随して書くものになりそうです。

 5室はやや喩えが難しいのですが、5室(恋愛・創造・遊び・趣味・賭け事・享楽的な場所……)って、たぶん核心的な意味として「エネルギーの放電(or浪費)」があると思っています。なので、4室で蓄えた根柢がどっしりと動かない感じですが、5室はみずからの育てられた魂を切り分けて生み出すものです(創作物のキャラクターに「うちの子」という感覚です笑)

 4室(育ててくれた家・精神的な基盤)から、エネルギーがどのように放出・発散されていくか……なので、「うちの子」がどういう風に生み出されたかは5室です(創作物でも浪費でも、既に溜まっているものがあってこそ出来ること……的なイメージ)

 ちなみに、5室はエネルギーの放出だとすると、10室との違いが気になりますが、10室はエネルギーの結実、きれいに形になっているもので、5室はエネルギーの奔放で無軌道な放電という感じです。

 11室は、“仲の良い友人・希望”なので、10室(自分ひとりの功績)を超えた先にある「無形のもの」が11室です。願いだったり、「天火同人」的なものは、“形になっている事業(10室)”の先にあるものです。

(雑な喩えをすると、9室は遍歴家、10室は事業家、11室は想望家です)

幹と枝と蔓

 というわけで、かなり無理矢理な喩えもあったかもですが、しいて簡単に云うなら、アングルは文字で書かれても何を云っているかわかる感じ(~~の家系に育った、~~の仕事をしているetc)、サクシーデントはアングルに付随して質問していくと出てくる話(結婚した人の家系が~~をしている人で、自分もそういうしきたりに関わるようになったんだよね、~~の仕事をしていたら……な友達ができて、一緒に――していて楽しいんだよね)、キャデントはアングルの裏話(~~の下準備がめっちゃ大変だったんだよね、これが完成する前に~~についてすごく深く研究したんだよね)です。

 木に喩えると、アングルは幹、サクシーデントは横枝、キャデントは蔓だと思います。幹は遠くからみてもわかるような、粗短で根が重い木or峻高で雄偉な木などの雰囲気をきめていて、アングルに天体が多いと、“骨が高い”印象です。

 一方で、サクシーデントは「横枝」っぽいイメージ(幹を次いで出てくるもの)なので、曲がった枝がぐねぐねと大きく伸びていたり、倒れそうなほど肉厚な枝があったり……という感じで、サクシーデントに天体が多いと“趣味性が豊かな印象”です(核心のアングルから少し離れて、遊びが多いor飾りが多いイメージ)

 さらにキャデントは、木そのものの形というより、周りのものと絡む様子が特徴的なイメージなので、まわりにある岩や他の木に絡みついている蔓の多い木……という感じです。蔓が多いので、どちらかというと“目立ちづらいところに入り組んだ魅力がある”という雰囲気です。

ハウスルーラーで描き分ける

 でも、ここまで読んできて「創作物(5室)がかならずしも育ってきた基盤(4室)の延長線にあるわけではないのでは……?学問的な研究(9室)をもとに作品をつくる人もいると思うけど……」「代々受け継いだ家業(8室)がそのまま仕事(10室)になっている人は、仕事の前の遍歴(9室)とかないのでは?」みたいに思うかもです。

 あるいは、「ハウスって星座の並び順にそって置かれているけど、自分らしさ(1室)が射手座で、育った家(4室)が乙女座的……という人もいるのでは?そんな機械的に配置できるものなの……?」という疑問もあるかもです。

(特に後者の質問は、自分もかなり疑問に思っていた笑)

 ところで、ホラリーチャート・イベントチャートとかをみていると、実際は「ハウスカスプが~~座」というのは、ほとんど気にしないというか、せいぜいアセンダント星座くらいしか気にしない印象があります。

 各ハウスについて読むときには、重みとして何となくですがこれくらいの感覚で読んでいる気がします(個人的な感覚です笑)

ハウスカスプの星座:ハウスルーラー=0:10
ハウスルーラー:在室天体=6:4

 どちらかというと、カスプの星座よりハウスルーラーがどういう状態かがそのハウスの様子をあらわしていると読んでいる例が多いです(そもそも、天体がドミサイルの星座に回帰しているほうが珍しいし、星座より天体のほうが少ないので、かならずどこかはハウスルーラーを読むことになります……)

 もっとも、出生図でハウスカスプの星座を無視するのは、あまりに極端だと思うので、出生図用の割合としては、ハウスカスプの星座:ハウスルーラー=2:8くらいかもです。

(ハウスカスプの星座だと12通りしか出せないけど、ハウスルーラーにはアスペクト・レセプション・ディグニティとかも付けられるので、カスプの星座の意味をハウスルーラーで裏付けしている感があります。)

 たとえば、Asc双子座、10室カスプは水瓶座で、10室ルーラー天王星は5室天秤座だったとすると、水瓶座的なものを生み出すのが表向きの仕事だけど、その内実は5室の天王星なので、自由で拘りのない楽しみになります。さらに天秤座の天王星なので、“おしゃれで洗練された場での軽やかな関係をもとにした楽しみ”みたいな感じになります。

(土星も読んだ方がいいのですが、とりあえずの例ということで……笑)

 というわけで、アングルのカスプorアセンダント星座もかなり大事ですが、その内実を描いているのはAscルーラーだったり、各室のルーラーだったりするので、どちらかというとハウスルーラーに重みを置いて読むと、「創作物(5室)は、実は友人との関係(11室)に基づいている」「友人関係(11室)は、狭く共有するものがある関係(8室)の中でつくられていた」みたいなことが出てきそうです。

(まぁ、こういう話は一般的な入門書とかでも書いてますが、この記事での話題はおもにハウスの三区分についてなので、)ステリウムがあるハウスなどは、実は別のハウスのルーラーも多く集まっていて、幾つかのハウスが複雑な機軸のように結びついています。そして、アングルにあれば外からみえやすく幹が太く高い感じ、サクシーデントにあれば横に延びて豊盛な感じ、キャデントにあれば外からはわかりづらいけど、隅・奥に複雑な面を隠し持っている印象……というふうになりそうです。

 こんな感じで、色々なハウスのルーラーが集まっている(ステリウムのある)ハウスをみていくと、普段のどういう活動が他の一面を支えているか等も読めそうです。どうでもいいけど、アイキャッチ画像の梅の木は、たぶんサクシーデント多め(笑)

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

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