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古典占星術と現代占星術の違い

 古典占星術と現代占星術の違いについて、よく“古典は吉凶判断がはっきりしていて、現代占星術はその人の内面を読んでいる”、あるいは“古典は細かいルールに従って読んで、現代占星術は想像力で豊かな解釈をする”みたいに云われていて、そういう違いも納得できるのですが、あまり書かれていない視点で個人的に思っていることを……という記事です。

(この記事は、古典・現代ともに俄か勢が書いているので、まぁそういう違いもあるかもしれないね……程度に読んでもらえると嬉しいです笑)

古典は物事の様子をあらわす描写が細かい

 古典では細かいルールがあって吉凶判断が厳明、という違いがよく云われますが、その吉凶判断としてエッセンシャル・ディグニティ&アクシデンタル・ディグニティ(本来あまり力がないのか、埋もれがちで力が出せないのか)、あるいはアスペクトの出来る順番(トランスレーション・オブ・ライトなど)、ある天体が別の天体を支えているか妨害しているか(レセプション)など、実際に物事がどのような関係で結びついているかを描写するルールが豊富です。

 そして、それらのルールは吉凶の内容が微妙に異なっています。たとえば、仲介する人や物があればトランスレーション・オブ・ライト、話がいいところまで来たのに頓挫する場合はレフラネーション(ある天体がアスペクトを完全に作る前に逆行してしまう)、別の人に先を越されるときはフラストレーション(ふたつの天体が合になる前に、第三の天体が割りこんで合になってしまう)みたいな感じでアスペクトの成立順でどのように物事が起こるかが描かれます。

 一方で、たぶんですが現代占星術ではその人の性格を読むことが多いので、性格内でアスペクトができる順序とか正直あまり区別できない……みたいな感じになって、用いなくても問題ないようなルールなのかもです。

 ちなみにアイヴィ・ヤコブソン(モダン初期の占星術師)は、月が生まれる直前に合になった天体&生まれた直後に合になる天体の組み合わせで、その人の感情の流れがどういう風になるか、みたいな読み方をしているけど、現代占星術の主流ではほとんど気にしない技法になっています。アイヴィ・ヤコブソンは、月のアスペクト以外にもホラリーの技法をネイタルに応用した読み方を幾つか紹介しています。

 もっとも、物事は次から次に起こるので、先には月と合になっていた海王星の影響でぼんやり不安になったと思ったら、そのあと月と合になる天王星の影響で突拍子もないことを思いついたり、また別のことでぼんやり不安になったり……みたいな感じで、順序としてきれいに区別できるか微妙だとすると、現代占星術でその辺りが緩くなったのも納得できる気がします。

 一方、現代占星術では、小惑星・ウラニアン天体・マイナー感受点(リリスなど)のように「その人の~~な面」をあらわす感受点が増えています。これは性格を読むときに、より深いところまで読めるように、主要な天体だけではあらわせない狭い意味の感受点を用いる、みたいなところが、より内面描写に特化した占星術という感じがします。

古典占星術ではアセンダント(1室)以外はみんな外物

 古典では、1室は私、2室は私の財、3室は私の兄弟、4室は私の家……のようになっていますが、現代占星術では

1室:私らしさ
2室:私はどのように財と関わるか
3室:私はどのように兄弟と関わるか
4室:私はどのように家(家族)と関わるか……

みたいな意味になっています。古典の方では、1室(&その在室天体)以外はみんな外にある物、現代占星術だと1室以外もすべて“私の中”に入っているので、却って1室(アセンダント)が分かりづらいのかもです……(批判ではないです)

 なので、強いて折衷して現代的解釈に寄せるなら、「~~のような……と関わるので、~~な感情を……に対してもっている」みたいな感じですかね……。

古典では星座擬人化ができない、現代占星術ではエッセンシャル・ディグニティを星座が吸収している

 古典占星術では、“星座は天体の形容詞”のような役割になります。なので、天体にとって似合う形容詞、似合わない形容詞というのがあって、それがエッセンシャル・ディグニティです。

 たとえば、「のんびりした激しいもの(牡牛座火星)」「きっちりした楽観家(乙女座木星)」「成果を重んじる善意(山羊座木星)」などは似合わない組み合わせです。一方、「幻惑的な美しさ(魚座金星)」「冷厳で苛酷な攻撃性(山羊座火星)」などは本色と違うけどむしろ映えるエグザルテーション、みたいになっています。

 雰囲気としては、本来の持ち味が出ていればドミサイル、本色と違うけど斜め上の魅力があればエグザルテーション、まぁまぁいいかもね程度だとトリプリシティ、めちゃくちゃ悪くはないけど、もっと似合うものあったでしょ感があればペレグリン、真逆の組み合わせだとデトリメント、斜め上の邪魔さがあればフォール(乙女座金星:実務的な奢侈、安心感のある荒っぽさ:蟹座火星、粘着的な安らぎ:蠍座月)だと思います。

 もっとも、現代占星術でもフォール、エグザルテーションくらいまでは出てくるけど……と思うけど、古典では星座とハウスの役割が違っていて、星座にしかできないこと(レセプション・アンティシアなど)があります。

 たとえば、蠍座火星はドミサイル、しかも山羊座木星をレセプションで支えているとします。木星はフォールに置かれていますが、蠍座火星の支えを受けていて、多少遊び心がない(山羊座)かもだけど、一つの方向に絞って弛まず粘りついて(蠍座火星のレセプション)着実に発展させる性質(山羊座木星)をもっていて……みたいに読めそうです。

 さらに、木星は仮に5室(カスプは射手座)のルーラーで、6室山羊座に入っているとしたら、火星は4室にあるので、家(4室)で多少気が凝るような面(蠍座火星が山羊座にレセプション)があるけど、一つの趣味や遊びをやや疲れながらも深めている(5室ルーラーが6室にある)、とか読めるかもです。

 というわけなのですが、こういう読み方をしていると、“星座は天体を飾るもの”なので、星座の擬人化しづらい感はあります。

 あと、ハウスは現実世界での場、星座は不思議な性質があちこちに入っていて、遠くのものに影響を与えたり、どこからか支えられたりする歪みやぬめり、繋がりなどが絡み合った空間という違いがあります。

 一方で、現代占星術でよくある星座擬人化なのですが、エレメントだったり三区分などの特徴の他に、蟹座が脳筋キャラみたいな書き方をされていたり、山羊座が怒ると相手をかならず潰す……みたいな書き方をされるのって、実はエッセンシャル・ディグニティが絡んでいそうです。

 蟹座だと火星がトリプリシティ&フォールなので、安心感のある関係を守るためについ火星的な荒々しい方法が出てしまうことがあるけど(トリプリシティ)、でもその前には大抵は身内の人が何かされている状況があったりして攻撃を嫌っている(フォール)という矛盾が入っているような感じです。

 逆に山羊座だと、土星(慎重さ、冷静さ)と火星(攻撃性、刃物)が一つになっているので、相手を潰したいときはかならず再起不能にするまで根絶やしにして焼き払い刻み切る……みたいな面がある星座、と書かれていたりします笑。

 これは太陽星座が普及している故なのかもだけど、星座の語彙がすごく豊かになっています。なので、古典占星術では天体の状態だったり天体どうしの関係を描くための装飾だった星座が、むしろエッセンシャル・ディグニティを吸収して人格化している感があります。

古典占星術では具体的な対策、現代占星術では精神的な意味を重んじる

 古典占星術では瑣末な規則があって吉凶判断が厳しい……というと、古典占星術は万事につけて否定的に状況をみている感があるけど、実際はいろいろな技法でみる方が抜け道をみつけやすかったりします。

 たとえば、私をあらわす天体と相手をあらわす天体の関係は良くないけど、相手が好意的にみている天体がいて、さらにその天体は私からみても連絡が取りやすいところに居るから、ここはその人を代理人として行かせた方がむしろ上手くいく……みたいな形で、もっとうまくいく方法を探したりもできます。

 古典では物事の描写が精切で、その状況の中でもっとも良い方法を探すという面では、そこまで否定的なことばかり云うわけでもない気がします。

 逆に、現代占星術では「成熟した~~座」「未成熟な~~座」みたいな書き方がよく出てきますが、これとよく似ている感があるものでMBTI(心理学による性格診断)で「成熟したISFP」「未成熟なENTP」みたいな表現が出てきます。

 MBTIのタイプは16種類に分かれているのですが、それぞれのタイプで

1:もっとも自然に使っている心理機能
2:一つめの心理機能を補うように出てくる機能
3:二つめの心理機能と真逆の面を補っている機能
4:最も苦手な心理機能(一つめの心理機能と真逆の機能)

があって、未成熟なときは二つめの心理機能くらいまでしか使えないけど、次第に第三機能も慣れてくると出せるようになって、さらに成熟していくと第一機能のために第四機能(もっとも苦手な機能)も使えるようになっていく……という成熟過程があるとしています。

 第四機能まで使ってしまうと却って無個性になるのでは……と思うかもですが、より豊かで深い第一機能(矛盾するものまで併せ呑んで包摂しているような)を育てていく、という感じです。例えていうなら、もとは一つの種類の木だけが生えている林だったのが、次第次第に雑多な木が生えてきて、それでも元々あった木を基調としていることは変わらなくて、より豊かで渾沌とした森になっていく……みたいな成熟過程が想定されています。

 それとよく似た感覚で、「成熟した~~座」というのも、ふだんは苦手なこと(90度or180度のアスペクト)などを包摂しながら、元の星座らしさも失わずにむしろ豊かで深い魅力になっているような姿(或いはアスペクト毎に成熟度が書いてあることもあるかも)を感じてもらえるのが現代占星術の魅力だと思ってます。

 そのとき、星座ごとにいろいろな語彙があると、その天体が入っている星座らしさが良い面で出ているか、まだ出し切れていないか……みたいなことが解釈できて、上に載せたような星座擬人化も解釈につながっていたりしそうです。

 アスペクトごとに意味が書かれているのも、たぶんだけどそのアスペクトが良い面を出せているか、悪い面が出ているか……みたいなことを成熟度から解釈するためかもです。すごく粗っぽく云ってしまうと、現代占星術は当たる当たらないよりも、より成熟した天体配置の活かし方を提案する、というのが近いかも。もっと雑なことを書くと、「当たらないのは今の状態がみずからの資質を捻じ曲げているから……」みたいな方法で人を救うのが現代占星術かも。

(現代占星術すべてがそういうものではないかもですが、個人的にいままで読んできて魅力的だったモダン派の記事などはそういう書き方でした。それぞれが行きすぎると互いに、古典派は奸黠、モダン派は迂愚みたいに譏り合ってそうですが笑)

 というわけで、すごく簡単に書いてしまうと、古典占星術は今の周囲の状態がどんなふうになっているかを読んで、その中でもっとも上手くいきそうな方法を探すためにさまざまな技法を使役する、現代占星術はその人のもっている魅力をさらに活かして、難点はより成熟して呑噬していく解釈をつくる、みたいな違いかもです。

奸黠:ずる賢いこと。「かんかつ」と読みます
迂愚:真面目で鈍臭い。

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

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