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マーク・エドモンド・ジョーンズ  大宇宙と大人と

 いままで何回かにわたってマーク・エドモンド・ジョーンズのホロスコープ解釈やサビアンの読み方について書いてきましたが、今回はそれらの技法を使ってマーク・エドモンド・ジョーンズのホロスコープを読んでみます(エドモンド・ジョーンズが使っていた技法のみ使える。サビアンも全てジョーンズ版の説に依る)。ホロスコープはこんな感じです。

 まずは形による七分類だとボウル型、あるいはボウルっぽい形だけど集中しているところもあるのでスプレー型という感じで、山羊~牡牛座、3~6ハウスがないです。というわけで、最初にボウル型で注目するのはleading planetになるのですが、このホロスコープでは海王星がそれです。

 海王星は双子座3度:パリのテュイルリー庭園なので、エドモンド・ジョーンズ版の解釈では

Ability to bring all his capabilities to some graceful and exquisite self-expression. The keyword is luxury. Participate in the full gamet of satisfaction.(全ての能力を淑やかで雅やかな自己表現に注ぐ能力。キーワードは贅沢。満たされる全域に入ること)

とあって、テュイルリー宮で双子座をするように優雅な(Luxury)会話を通じて様々な面で満たされるという意味なのですが、これが7ハウスの海王星なので、美しい言葉が世界には存在し続けているはず、という思いに縛られる(ジョーンズ説では、海王星は人間世界にぼんやりと漂って人々を縛り続ける何物か、みたいな意味です)と読みます。

 エドモンド・ジョーンズのホロスコープでは、山羊~牡牛座がないので、自ら(あるいは本人にとっては「人間」)が生きている世界の外側を知ろうとすると、双子座海王星に頼ることになります(エドモンド・ジョーンズの理論では、leading planetは天体がある部分の中では、最も空白部分に近い性質を持っているとして、それが十全であろうとするホロスコープの中で重い意味になることが多いです)。

 また、スプレー型とすると海王星は冥王星(未知のもの)と合なので、「美しい言葉は神秘にして未知のもの」という意味になってきます。

 さらに火と風が多くて、水が少し、地が無しなのですが、火+風らしさを感じるのはホロスコープの解釈例の出し方です。

 過去に、この記事と近い内容のもので(対談も同じく鏡先生とSUGAR先生だった)、火と風の混ざった人は一種の時代精神のような大きい物語を語るように占星術をする(ネイタルのエレメントと必ず一致するわけではないだろうけど)とあって、エドモンド・ジョーンズが初心者向けの本で例に出している人物が西洋の有名な政治家・芸術家などで、それぞれの政策や作品がどのような時代を象徴しているか(例えばセシル・ローズは木星の拡大欲求と、牡牛座の所有欲・蟹座の内に取り込むことが合わさって、南アフリカで鉱山を求めて植民地を拡げた、ダンテは世界の上には未知の存在が蔽っていたような感性を持っていたので『神曲』を作れたなど)という読み方をしていて、性格を読んでいるのにそういう話が入っているところが不思議だったのですが、いわゆる火+風の右上系です(一種の史観があるというか)。

 あと、サビアンの本を紹介していくときには引用は一部省略したり意訳したりがあったのですが、(それでも気づいた人は多いと思うけど)原文は異常に抽象的で読みづらいです。とりあえず例を挙げてみると、

天秤座9度:アートギャラリーに掛けられた三人の巨匠(エドモンド・ジョーンズの太陽の度数)
This is a symbol of capacity for embracing a universal reality within his own personal experience. Here is representation of the fundamental faculties of self-expression as they may be established in effective alignment with each other, thereby furthering every pertinent aspect of human potentiality. Implicit is the concept of the past and the present as irrevocably in partnership, every individual’s heritage providing him with a foundation for the achievement he desires. The keyword is accord. When positive, the degree is a gift for bringing people and events together in high appreciation of the greater values of life, and when negative, idle worship of tradition and destructive self-contemplation.
(これは、普遍的な真実を自らの個人的な経験のうちに擁することの象徴。自己の表現が他者と合わせて効果的な形に配されて確立されるような基調となる能力のあらわれがあって、それゆえ人間の秘めている能力として全ての面で推し開いていくことになる。含まれている意としては止むことのない繋がりとしての過去と未来という概念で、全ての人たちによる遺産は、この度数の人が望みを遂げるための基盤を与えているということ。キーワードは“一致”。いい意味では、この度数は人々や出来事などを人生のより大きい価値を感じる経験に引き込んでいくこと、悪い意味になると、伝統への偶像的崇拝、さらには何も生み出せない堂々めぐりな熟慮。)

 ……もはや直訳するのがとても難しいほどなのですが、この抽象性の高すぎる文章は地の欠如っぽいです。ちなみに「embracing a universal reality within his own personal experience(自らの個人的な経験のうちに普遍的な真実を擁する)」という感覚はエドモンド・ジョーンズのサビアン解釈全体に流れている雰囲気だと思っています(以前の鏡先生とSUGAR先生の対談では、火+風が行き過ぎると誇大妄想的で、「今が時代の変わり目だ」みたいな雰囲気になっていくとあった気がする)。このことはエドモンド・ジョーンズの文体にも現れています。

 例えば乙女座22度:王家の紋章では

This is a symbol of eternal authority implicit in the very fact of existence, and of the consequent dignification of experience through the law and customs by which man organizes the conduct of his own affairs.(これは、滅びない権威は実在そのものの事実の中に暗黙としてあること、さらに、その人の行ったことを整理するような法や慣習を通して結果的に経験が威厳を帯びていくことの象徴。)

のようになっていて、「consequent dignification of experience」と「through law and customs by which man organizes~」ってなかなか一つの場面に繋がらない(法・慣習が経験に威厳を与えるのと、過去の行いを法や慣習で整理するのは別の場面の感じがする)ような、何重にも原型を引用してつないだような文体です(この原型論的な文体は、地星座が無いゆえに過度に抽象的な思惟ができるためだと思う)。

 あと、サビアンの説明の言葉がやや仰々しい感じになる(「不滅の~性、あるいは超越的な力との……するような関わり」みたいな感じです)、あと、~ness、~fulness、~less、~lityなどの語彙の中にときどきネットで調べても出て来ないものがあって、たぶん日本語でいうと~性、~汪溢性、没~性などの語彙がとても豊富な文章になると思う。

ちなみにハウス毎にどのようなことを表す言葉と結びついているか何となく想像してみると

1ハウス:自分訛りの言葉(語彙だけでなく文法や言い回しも含む)
2ハウス:愛用語(1ハウスほど変な訛りや使い方はしない)
3ハウス:俗語・白話(雑多なことを広く浅く含めるような)
4ハウス:和語、あるいは英語でいうアングロサクソン語
5ハウス:奔放で“文学的・詩的”な言葉
6ハウス:日常生活の言葉(安定した日常世界の)
7ハウス:社会生活に一般化した言葉(標準化された言い回しなど)
8ハウス:狭い間柄での隠語
9ハウス:学術的な言葉。やや奇僻な造語もある
10ハウス:伝統的で雅正な文語
11ハウス:雅正な語をあえて様式破壊的に用いる現代詩のような表現
12ハウス:舌足らずなのに雰囲気で伝わる、忘れられた古歌のような(「思う心の端ばかりをも云わぬぞ、よく云う人の心にもまさりてあわれなり……」のような雰囲気)

のようになって、それぞれの人は、これらの領域への感度の豊かさに違いがあって、あるハウスを濃く感じているような気がする。3・4ハウスはアングロサクソン語(あまり詳しくないけど、不規則な過去形になるもの)、9・10ハウスはラテン語由来(語源をきれいに分解できる感じ)だとすると、エドモンド・ジョーンズの文章はほとんどラテン語由来の語彙だけで書かれている。逆にアングロサクソン語系の語彙はほとんどない。

 エドモンド・ジョーンズのホロスコープで天体が入っているのは7・9・11・12・1・2ハウス(月・土星合はやや9室っぽい気がする。エドモンド・ジョーンズはキリスト教の牧師や、哲学の博士号を取ったりしていて、個人的な探求の色がある。さらに神学の研究もしていたりと、9ハウス感が強い、あるいは9ハウス:大きい哲学的なものが10ハウス:一生の功業にどのように入っているかでホロスコープを読んでいる印象)です。

 もう一つ面白いのはサビアンシンボルの本で、それぞれのサビアンのキーボードを一言で表しているのだけど、不思議な言葉を選んでいる例が幾つかあるので、それを引用してみます。

牡牛座28度:成熟したロマンスで求められた女
The heightening of appreciation which comes with genuine maturity. The keyword is persuasion.(本当の成熟による鑑賞の高まり。キーワードは見解)

双子座18度:中国語を話す二人の中国人
Everyday exclusiveness on the intellectual side of experience, the individual strengthened not as much by actual distinctiveness as by continual co-operation with fellow enthusiasts in various special areas of interest. The keyword is difference. When positive, the degree is the effective mobilization of self and others for life’s more specialized objectives.(様々なことの知的な面での日常的な包括性。それぞれの人は本当の独立性において強められるのではなく、個々の方面に興味をもつ愛好家たちの共同で強め合っている。キーワードは違い。いい意味だと、この度数は自らと他者の特化した目的のために効果的に動員し合うこと)

水瓶座2度:予期せぬ雷雨
Nature’s potentialities as they beyond any individual control. Every living spirit remain wholly self-qiuickened within itself, and be alert to its more or less inevitable participation in every shifting  pattern of events. The keyword is accident.(人間を越えて存在するような自然の潜在的本質。すべての生き物はそれぞれ自らによってのみ動かされているのに、多かれ少なかれ逃れられなくて、移り変わっている出来事の枠組に組み込まれていることを感じている様子。キーワードは偶然性)

 牡牛座28度のpersuasionは、通常は「見解」の意だけど、ここでは深い感覚などによって練り上げられた成熟した感受性、双子座18度のdifferenceはそれぞれの人の専門分野が少しずつ違うこと、水瓶座2度のaccidentは偶然性の中に普遍的な本質を見つけることなので、それぞれキーワードとサビアンシンボル本体の意味の間に独特のずれがあるというか、匂いのようなものを漂わせる言葉選びをしていて、これがなんとなく12室の雰囲気っぽいです(意識に上る前のものみたいな)。

 あと、この記事でやっていた方法で、最もタイトなハードアスペクトはその人の人生で常につきまとう葛藤として読めるとあったので、エドモンド・ジョーンズのホロスコープで見てみると、1ハウス射手座木星と7ハウス双子座海王星がそれです。

 海王星の意味はさきに書いた通りなので、木星はみずからのことを表す1ハウスで、外からさまざまなものを取り込む星なので、サビアンシンボルの研究に30年を注ぎ込んだことなどはそれだと思います……。

 さらにドラゴンヘッド・テイルとパート・オブ・フォーチュンも重視して読んでいたのでみていくと、ドラゴンヘッドは蟹座27度、テイルは山羊座27度です。

蟹座27度:渓谷の嵐
Violence and terror as divine in their capacity for lifting man out of aplomb. Ability to rise in supremacy over each momentary crisis. The keyword is intensification.(落ち着きから人間を引き上げる能力の、暴力的で怖ろしい神々しさ。あるいは短い間の危機において覇権を執るような力。キーワードは強化)

山羊座27度:山の巡礼
Pyramiding reality on the side of inner or spiritual realization in a complete harmony of all ideals. The keyword is perseverance.(内的あるいは精神的な面で、完全に調和した理想の中に秩序化された現実。キーワードは忍耐)

 ジョーンズ版の解説だと、蟹座27度ってむしろ凶暴というか荒々しいまでの力でみずからの大事なものを守る意味になっていて、それは渓谷の嵐のような凄まじさが欲しいということなんだけど、ジョーンズ説ではspiritualな度数なので、水の精神性が高まると却って実体化していく(逆に山羊座27度は、地の精神性が高まると却って虚に捧げるようになる)様子です。

 人間はみえない秩序による救いを求めがちだけど、それゆえに人は時に凄まじいものを以てしても生きていく、という一種の雄邁さがある(サビアンで不吉な印象の度数には、むしろそのような強さを持つという解釈をするのはその為だと思う)。

 そして、パート・オブ・フォーチュンは乙女座18度:ウィジャ盤で10ハウスです。見えない世界と結びつきながらも、そのような兆しを読み取って活かしていくという度数なのですが、10ハウスにあるのでサビアンの解説が異様に壮大というか荘厳というか、大きい秩序を考えるような解釈になっている気がします(この辺りは具体的にどの天体がこの要素というのは難しくて、全体の雰囲気が幾重にもそれっぽいという感じだけど……)

 エドモンド・ジョーンズの解釈で特に印象に残ったのは、アスペクトをほとんど言わない(読むときはまとまり感覚として使っている)ことで、天体をエネルギーの偏りとして読むと、それぞれの天体が別の意味を持つというより、大きい統合になるという発想が基調にあって、すべてに於いて大を用いるに巧みな人という印象です(雑に読んでいるように見えて、実は天体配置の偏りや、特に重く読む天体の絞り方など、行動様式に大きい影響がある面を上手く捉えて、「特に大きい傾向は……」のように読んでいる感じがあり、全体を平均化して読めばいいと云う訳ではないのかもですが)。

 ちなみにもう一つ興味深いのが、ホロスコープの形による分類の本で、その形に分類される人の例を出すときによく「prophet」という語彙が出てきて、ふつうに訳すと預言者なのですが、どうやら雰囲気的に「~の霊を受けた人」みたいに使っているらしいです。この感覚だけでも、さきに書いたエドモンド・ジョーンズのホロスコープ解釈を象徴している気がするけど。

(火+風が行き過ぎている感もあるけど、さほど不健全な方向にいってないので、読んでいてあまり危ない感じは受けないです)

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

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