ホラリー占星術

配管系統・湿地のハウス

 占星術の用語の中で、基礎的なものなのに最も説明が難しいものの一つに「8ハウス」があると個人的に思っていて、“共有の財”が本質的な意味(2室が“自分の財”なので、その対)で、遺産あるいは他者と共有している財としての借金はまだわかるけど、死と再生・オカルトなども含まれていたり、他者との深いつながりも示したり……と、何でそういう意味になるのか分かりづらい気がするのですが、最近思ったのがこの曲の歌詞で書かれていることが全て8ハウスっぽい気がします。

  集結の園へ
仕組まれている終結さえも
求め過ぎてた答えならば
記号の中で泳ぎ疲れて
行き着く先はただの「カリソメ」

永い時はなれても
知っている必ず呼び合う
絆を運命と呼ぶ事

抱いて抱きしめても抜け出せない
定められた境から
溶けてなくなるほどの進化へと
おかえりなさい

白い結晶(やさしさ)がふりそそぐ都市(まち)
全ては包まれるだけ
誰が決めた訳でもない夢へ
おかえりなさい
心のままに

君の瞳に映るそのかげ
何を想って何を見てる
感じる事に信じる事に
ゆだねる事に臆病になる

永い時待っていた
微笑んで支えになりましょう
ひとりで空に願うのなら

いつかくり返す命の出口
さらにその先にみちも
きっと出会えると信じて泣こう
おやすみなさい

赤い血潮(かなしみ)が渦巻く波間
寄せては返すいとなみ
愛し愛され一つになるまで
おやすみなさい
時は満ちるから

 一部だけ引用しましたが、8ハウスは人間が古くからずっと受け継いできていて、個人の所有を越えた“溶けてなくなるほどの進化へと”帰っていくようなこと、死と再生は“いつかくり返す命の出口、さらにその先のみち”でも“きっと出会う”ものたちみたいな意味に思えてくる。

 あと、8室のオカルト・12室のスピリチュアルって、かなり区別が難しい気がするのですが、オカルトは世々にわたって受け継がれてきた魔術、12室はそれぞれの人が見えないところに溜め込んできたものの浄化という違いになりそうです。

 ホラリーの失せ物占では、場所で表すと(場所の喩えは、すべてアンソニー・ルイス:著、鏡リュウジ先生訳の『ホラリー占星術  入門と実践』に依ってます。一応ページ数も載せておきます)、蠍座(8ハウスのナチュラルサイン)は

蠍座:ごみの中、道に迷う、水の近く、ごみの近く、害虫と爬虫類が繁殖する場所、這って進む動物の生息地、沼地、湿地、ゴキブリがはびこっている場所、配管系統の近く、台所、洗面所、トイレ、浴室、墓地、死に関する場所、悪臭のする澱んだ水の近く、洪水の影響を受ける場所、湿ってかび臭い場所、地下トンネル、秘密の引き出し、秘密の出入り口……(303頁)

のようになっていて、8ハウスは

8ハウス:ごみの中、すでに死んでいる、水か配管系統の近く、排出場所の近く、浴室(339頁)

みたいになっているのも、暗い渾沌の中に一度帰っていくような場所という意味で全て通じていて、蟹座・4ハウスもみてみると

蟹座:海洋、可航水域、流水域、川、湖、泉、井戸、湿った場所、流し台、溝、流し台、ポンプ、湿気のある地下、洗濯室(299頁)

4室:家の中央か家のもっとも古い場所、台所、食料貯蔵室、地下、庭か庭園(339頁)

のように、安らげる場所(可航水域や泉・井戸など)、養ってくれる場所という雰囲気があって、蟹座(4室)の水は色が明るくて飲める、蠍座(8室)の水はじとじとしていて色が暗い印象(たぶん飲むと毒がある)があります。

 さらに、魚座・12ハウスについてもみていくと

魚座:海岸沿い、沼地、川や池、水泳場、漁場、水族館、水に近い場所、ポンプ、井戸、聖地、僻地、監禁場所、冷たく湿った床、天井の低い部屋、低地、辺鄙な土地、洪水の影響を受けやすい土地、人目につかない(307頁)

12室:監禁場所、閑静な場所、祈り・睡眠・瞑想のための場所、隠れて見えない神秘的な場所(340頁)

のようになっていて、蠍座・8室系の場所となんとなく区別が難しい気がしますが、例えば「蠍座:洪水の影響を受ける場所、魚座:洪水の影響を受けやすい場所」って何が違うのかと思って、他の場所の例とのつながりをみてみると、魚座の「水泳場・漁場・水族館」ってふわふわと緩む場所みたいな感じがあって、井戸も蟹座の井戸は街の中にあって皆が汲んでいる井戸、魚座の井戸は村はずれにあってたまに汲む人がいるかもしれない井戸(ちなみに蠍座で喩えると、泥が溜まって鮒が入っていたりする古い井戸みたいになるかも知れないです、蠍座を悪く云っているわけではないですが……)、ポンプも蟹座では水道管みたいな雰囲気、魚座はもっと裏手のポンプ室みたいな感じだと思っています(上にあげた配当で読んでみると、蠍座は下水道的な意味を感じる。この不思議な翳のある深みが蠍の魅力だと思っているけど)。

 そんな感じでみていくと、同じ「洪水の影響」でも、蠍座は未整備でごたごたと葦や古杭が立ち並んで廃材だらけで泥が滀まっているべとべとした低湿地、魚座は閑散としていて何もなく、堤防の陰に囲まれて人目につかない田んぼみたいな雰囲気になりそうです(家の近くに四方を堤防に囲まれた、不規則型の田んぼが幾つかあるだけのそこそこ広い土地があって、昔は何でこんな形になっているのか疑問だったけど、あれが12ハウスだったのか……と感じている。本当に外からは何もみえなくて、不思議な雰囲気が好きだった)

 というわけで、8ハウスは色々と説明が難しい印象があるような気がしたのですが、命の出口のような暗い渾沌に帰る排水管(たまに古いものが何か上がってくることがある)みたいな感じが本質的なイメージのような気もします。

 ここからかなりの余談なのですが、蠍座のサビアンシンボルで「2度:割れた瓶とこぼれた香水」って、溜め込まれていた感情の澎湃かもしれないし、「4度:火のともったろうそくを手に持つ若者」や「25度:X線」って、入り組んだ下水管の中をどろどろと流れていくものを見る意味かもしれなし、9度:歯科の仕事、11度:救助される溺れた男、13度:実験をしている発明家、14度:仕事中の通信技術者などはすべて水道管をあれこれしている様子、30度:ハロウィンのわるふざけに至っては、どろどろと溜まったヘドロを出してみるときの一種の楽しさみたいなものを感じるのですが、これはどうでもいい解釈。

 ちなみに、蠍座30度:ハロウィンのわるふざけの対極にあるのは、牡牛座30度:古代の芝地をパレードする孔雀(どぎついまでの絢爛豪華さ)、90度にあるのは獅子座30度:開封された手紙(みずからの感情の大きい表出)、水瓶座30度:花咲く神秘の野原(普遍的な真理の横溢)みたいになっているので(30度のサビアンは、星座の意味の最終形態みたいな雰囲気がある)、8室が蠍座だと古くから受け継がれているものとして切っても抜け出せない水道管の絡み合いみたいなものを感じるかもしれないし、牡牛座だと物や感覚、獅子座だと自らの表出と他者の響き合いの様子、水瓶座だと普遍的な洞察などが受け継がれて流れているものと思うのかもですが。

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

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