音楽

津軽の地吹雪  高橋竹山

 すごく久しぶりの更新になっていまいましたが、とても魅力的というか、恐ろしいまでのホロスコープをみたので、ひとつリーディング記事になります。

 今回読んでみる方は、津軽三味線の奏者  高橋竹山(ちくざん)さんです。1910~1998という、かなり長い時代にわたって活動した方なのですが、この方についてほとんど知らないと思いますので、もしよかったらこちらの動画をご覧いただけるとなんとなくわかると思います。

 ……この音、聴いていると泣けるんですよね。特に1:55あたりからの弦を二本まとめて弾くときの音が大好きです。もう、この音だけ聞いてしまえば、ホロスコープなんていらないような気もしてきます。

 竹山さんの人生や性格について知りたい方は、こちらの動画をみていただくとなんとなくわかると思います(30分くらいのかなり長い動画です)。

 もはや自分なんかが、この人の人生にどうこう言うべきでもないと思いますが、一応 占星術のブログなので、蛇足は十分にわかった上で余分なことを書かせていただきます……。

切り裂く地吹雪

 チャートはこんな感じです(出生時間不明)。

 月はどちらかというと蠍座っぽいかなと思います。上の動画の中で、戦中に浪曲の一座に入っていたときに、家で竹山さんの子が危篤になったときも、腕のいい竹山が帰ってしまうと人が集まらなくなるのを恐れた浪曲一座の長が、危篤の連絡を隠しつづけていて、巡業が終わって帰ったときに亡くなっていたことを初めて知らされる……というエピソードがでてくるのですが、ちょっとそういう話を思わせる印象があります。

 あと、幼いときに麻疹の後遺症でほとんど視力を失うことも、月と土星の180度で「幼いときに苦しめられること」をあらわしているような気がします。(この土星と月については、のちほど詳しく書きます。もっとも、こんな書き方だけで語るべきでもないと思うけど)

 あと、現代としてはもう通用するか怪しい読み方だけど、月=妻とすると、竹山さんの妻はイタコだったので、蠍座で月リリス合って、ふだんは封じられている暗い感情に深くふれている人っぽい感じがします。土星と180度なところも、現実社会の秩序から外れている薄暗い感情界のことをみている人らしさがあって、どこか不思議です。

冥王星双子座世代の音楽の完成形

 そして、もうひとつ目を引くのが太陽と冥王星のかなり密な合です。

 竹山さんは音楽をやっていた人なので、冥王星の世代ごとに音楽の特徴をかいてみると(これは洋楽の例になりますが)

冥王星双子座時代(1884~1914年):似たような小曲をたくさんつくる時代。デューク・エリントンの戦前期、戦前のブルースなど。

冥王星蟹座時代(1914~1939年):みんなで盛り上がれる曲が多い時代。ロックンロール・R&Bの創始者たちがたくさん生まれた時代。

冥王星獅子座世代(1939~1957年):冥王星が双子座・蟹座にあったときに生まれたミュージシャンの作品は、ある意味で千篇一律なところがあったけど、この時期からそれぞれの作品性が高いものが生まれてきた気がする。ジミ・ヘンドリックス、ボブ・ディランなど、音楽的にもっとも豊かで多彩な時代。

のようになっていて、竹山さんは1910年生まれなので、冥王星双子座世代です。近い生まれだと、戦前ブルースでとりわけ有名なロバート・ジョンソン(1911~1939)がいます。

 こちらがロバート・ジョンソンです。戦前のブルースの中でも、ロバート・ジョンソンの歌詞やアレンジの完成度はすごく高いとされています。実際、ちょっとずつ曲にあわせて速くしていくアレンジ、不穏に強弱が変わっていく弾き方などはすごく練り上げられていて惹かれます。

 もっとも、ロバート・ジョンソンはあまり曲調がいろいろあるというタイプではないので、はじめて聞くと「どれも同じに聞こえる……」という感想はよく言われていたりします(戦前の音楽あるあるです笑)

 これが冥王星双子座世代の曲(短い3分くらいの簡単な構成の曲が多い)なのですが、みんなで踊りやすい冥王星双子座~蟹座時代をへて、冥王星獅子座時代になると構成も歌詞も一気に複雑で長大なものになっていきます(さらに曲調やスタイルが一気に広がります)

 竹山さんが三味線を覚え始めたころは、目のみえない人は三味線弾きか鍼灸師くらいしか仕事がなく、三味線を弾く場合は、門付け(かどづけ)といって、それぞれの家をまわりながら三味線を弾いてお金や食べ物をもらう生活をさせられていたので、竹山さんも東北だけでなく北海道や樺太などにも門付けにいきました。

 ちなみに、三味線を弾く人は、門付け以外にも旅芸人の一座に加わって歌の伴奏をすることなどもありましたが、そのころの演奏はこんな感じで、あまり複雑なことはしなかったそうです。

 これはこれで味わい深い世界です。(さきほどの竹山さんの演奏をあらためて聴いてみると、曲としての構成が何倍も複雑化・長大化しているのがわかります)

 ここでホロスコープの話になってしまうのですが、竹山さんの太陽は双子座で冥王星と合です。さらに冥王星はサウスノードのルーラーでもあります。

 サウスノードは人生の前半期の様子ともされているので、双子座冥王星的な音楽に深く向き合うことが人生の前半期(おもに戦前期)の竹山さんの生活でもあり、ほぼすべての時間だったような気もします(太陽は冥王星と合しかアスペクトがないのも、どうしても逃げられない感じが出ています……)

 竹山さんはやはり当時の三味線奏者と同じように双子座冥王星時代的な音楽のなかで育った感じはありそうです(ホールサイン的にみると、月のハウスのルーラーも冥王星です)。双子座太陽が冥王星と合というのも、逃げられない重荷を負わされながらの苦しい“移動”という印象だったりします。

苦しみの金星

 その冥王星双子座世代的な音楽がどのようになっていったのかを示しているのが、ノースノードのルーラー金星だと思います。

 ノースノードは牡牛座にあって、ホールサイン的にみると、金星はノースノード・土星と合になります。ノースノードは後半生でめざすことなので、牡牛座金星的な感覚の美をめざすのですが、金星土星合なので、その練習がものすごく苦しい上に、現実世界の艱難に何度も潰されかける……という気がするのですが……。

 さらに、この土星は月と180度です。幼いころの自分を苦しめたもののせいで身につけざるを得なかった三味線、という読み方になりそうのですが、この音楽は冥王星双子座世代の感性を大きく超えたものになりはじめています。

 さきのブルースの例をみると、戦前以来のブルースは、1970年代になって冥王星獅子座世代のミュージシャンが出てくると、ある種の単調さ故に少しずつ表舞台から追い落とされていってしまうのですが、1980年代の中盤にいたってスティーヴィー・レイ・ヴォーンがあらわれて、戦前的なブルースのスタイルを70年代以降の音楽に融合させたようなスタイルをもう一度メインストリームに蘇らせます。

 戦前風のブルースと、60~70年代的な音楽のひとつの違いとして、戦前のブルースは一人で弾くことが基本だけど、60~70年代の音楽は複雑なアレンジをしているので楽器ごとの役割分担がある、という面があります(すべてではないですが)

 そして、ギターに限っていうと、戦前のブルースではギターは二本以上の弦をまとめて弾く音がかなり入っていて(“ダブルストップ”ともいう)、60~70年代になると伴奏では弦をまとめて弾くけど、ソロでは一本ずつ分けて弾くことが多いです。

 ですが、スティーヴィー・レイ・ヴォーンをみていると、あちこちで弦を二本以上まとめて弾いたりするフレーズが入っていて、それが60~70年代以降の音楽にはあまりなかった泥臭さというか、濁りを生んでいます。

 スティーヴィー・レイ・ヴォーンが当時あまりに衝撃的だったのは、長らく忘れられていた戦前風の奏法(ギターひとつで魅せるための奏法)をもう一度蘇らせて、しかも戦前の焼き直しではなく、より複雑なものにしていたことだと思うのですが、高橋竹山さんの三味線にもそういうものを感じます。ちなみに、最初の曲の動画で1:55あたりからの二本同時に弾いているのが三味線のダブルストップです。

 竹山さんの動画のコメントでよく「変に個性を出そうとして変わった弾き方をしているわけではないけど、ひとつひとつの音が自然にもっとも美しいように聞こえる」みたいなことがよくあります。

 スティーヴィー・レイ・ヴォーンもよく見ると「クセの塊」みたいな弾き方(右手を前後にまわすように弾く、かなりマニアックな話だけどピックの丸いほうで弾くなど)をしているのに、ブルースの完成形のようなものになっていて、戦前ふうの一人で一つのジャンルをもっているような世界をもう一度生み出しています(戦前のブルースは、それぞれのミュージシャンの癖がとても強い。小さくて多彩な勢力がたくさん居て、それぞれがちょっとずつ違うというのが双子座っぽい)

 戦前の音楽のようなものがさらに複雑に進化していった姿がこれだとすると、前半生(サウスノード)のルーラーが双子座冥王星だったり、後半生(ノースノード)のルーラー金星が土星と合というのは、双子座冥王星世代的な音楽がそのまま洗練されて練りあげられていくことなのかもです。

晴らしきれない怒りと悲しみ

 ここからはちょっと気持ちについての話になりますが、竹山さんのホロスコープで目立つのは、月・火星・土星のTスクエアです。

 さらに月と火星はミューチュアル・レセプションです。お互いがフォールになる星座にある状態でのミューチュアル・レセプションなので、苦しい中でのつながりみたいな印象があります。

 実際、30分ほどの動画のほうでも、22:20~と26:30~をみていただくと、倒れそうになりながら、通りかかった朝鮮人の炭鉱労働者の宿舎で助けられた話だったり、目がみえなくて間違えていると思い込んだ駅員や車掌にグリーン車から降ろされそうになる話などがあって、蟹座火星と蠍座月のミューチュアル・レセプションを感じさせて泣けます。

 ミューチュアル・レセプションって支え合いという意味だけど、互いにフォールのミューチュアル・レセプションだと苦しい中での支え合いという意味にみえませんか。朝鮮から無理やり連れて来られた炭鉱労働者からわずかな食べ物をわけてもらう話、樺太に流刑になっていたロシア人に助けられた話などは、言い尽くせない悲しみと苦しみの中(蠍座月)での、自分の身を切り合うようにしてでも助け合わないと生きていけない蟹座の火星の混ざりあいを感じるのです……。

 さらに、火星と土星は互いに相手をデトリメントとして扱っています(「負のレセプション」とか呼んでいます。そういう用語はないのですが)。

 土星(厳しい現実。金星と合なので、芸を磨かなくては生きていけない世界)と、火星(蟹座なので仲間を支えたいけど、火星の凶忍さがみずからの身をも傷つけるようなやさしさになる)が互いに傷つけあっているけど、その火星は月と苦しい中でのミューチュアル・レセプションにもなっていて……という、三味線や自分の感情とあまりにひとつになりすぎた絡み合いにみえるのですが。

 もしかするとですが、三味線をここまで磨かざるを得なかった生き方への悲しみだったり、その中で感じた支え合いだったりが無理やり一つに混ざりあっている組み合わせなのかもです……(まぁ、これをホールサイン的に読むと、火星は月・土星とソフトになるのですが、その分レセプションが濃く出るので、さらにその意味は強くなりそうです)

 月とリリス合というのも、ふだんは伏せられているほどの暗くてぼろぼろな感情のつながりをみるような気がするけど(リリスは“不気味なまでにその星座の意味が深められている様子”だと思ったりする)、これは良いとか悪いとかを超えたものにも見えてきます。

 ここまで書いていて改めて思うのですが、津軽三味線の昔の在り方が良いとか悪いとかそういう話ではない音をみせられている気がしてきて、冥王星とかリリスとかのもっている善悪から離れた存在って、こういうものなのかもしれないのですが。

 まぁ、こんな話で何かを書いたことにもならないのでしょうが……。

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)の月天王星海王星合だったりします笑。 易・中国文学などについてのブログも書いてます

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