記事が多くなりすぎると興味のある場所だけをさがすのが大変かもなので、時代ごとにわけて目次をつくってみました。好きなところから読んでいただいて大丈夫なように書いてありますので、気が向いたところからみていただけると嬉しいです。
先秦
詩経 古くて素朴な世界
中国で文学の祖とされる詩経についてです。素朴な民俗が魅力の国風、まじめな内容と深みの魅力の小雅、大きくて格調高い大雅・頌というふうにわけて紹介してあります。もっとも、原文はかなり読みづらいのですが(笑)
九歌 楚の里神楽
楚辞の中でも、とりわけ妖しさと不思議さに魅力を感じさせる「九歌」から、三つほど選んで解説しています。うねうねぎらぎらとあやしい光を帯びた神々や、鬱蒼としたみどりがきれいな楚の山中の雰囲気を感じていただければうれしいです。
宋玉 淫麗優美な美文家
戦国時代の楚の末期にでてきた宋玉についてかいています。宋玉は、楚辞の表現を借りながら、より人工的で洗練されて、しかも繊細で複雑な趣きのある作品をたくさん残していて、それでいて植物や水の匂いも綺麗でおすすめです♪
荘子
先秦諸子のひとつ、荘子についてです。わたしが中国文学に興味をもつきっかけになった作品なので、熱量が入りすぎて字数がかなり多くなってしまいましたが、荘子の渾沌とした川の中に浮かんで生きているような人間観を伝えられるような記事をめざしてみました。
周礼 妖の古代世界
人間と妖怪・神々などが同じ場所に生きていたころの雰囲気をのこしている怪しげな『周礼』の世界についてです。周の時代の官制って、もはやほとんど祭祀と鬼神のためにあったような感すらあるような……。
漢代
漢賦 ごつごつした瑰麗雄偉
楚辞の土着色を抜いて、かわりに漢の巨大できらびやかな文化を詰めこんだ漢賦についてです。漢賦の魅力は、なんといっても多彩で装飾過剰な擬態語のぎらぎらごてごてなイメージの大氾濫だと思います♪
後漢の文章
後漢の文章によくある魅力についてかいてみました。ふつう、文学としてはあまり評価されていないかもですが、後漢の文章って、人間も自然もすべて天地の中につつまれて生まれていて、表向きはばらばらなのに、どこかで天地の永遠さとつながっている感があります。
詭弁詩人 枚乗
前漢のはじめごろにいた枚乗(ばいじょう)についてです。枚乗は、漢代の賦の初期ともされますが、そのスタイルはどちらかというと戦国時代の弁論術あたりにもとづいていて、やや煙にまくような話ぶりが魅力です。
王褒 奇文の工芸家
漢代の賦の中で、わたしがもっとも好きな王褒の「洞簫賦」についてのお話です。漢賦は複雑で多彩な擬態語がでてきますが、その擬態語がみっちりとつめこまれた螺鈿や蒔き絵のようにきらきらと趣きを変えながら、ぎちぎちに絡み合う世界を楽しんでみてください。
西岳華山廟碑
西をまもる霊山とされた華山(かざん)での祭祀についてかかれた「西岳華山廟碑」についての解説になります。ぎちぎちごつごつしているのに、漢賦のようなきらびやかさも失わない渋い味わいが大好物です(笑)
怪誕なる神仙思想
戦国時代の燕斉(山東~遼寧省)でうまれて、漢代になってから大いに世をまどわせた神仙思想や、それとつながる霊山文化などについてのご紹介です。整理されているのか、雑多なのかわからない奇妙な世界が垣間見えます……。
古詩十九首と楽府
中国文学といえば詩、みたいなイメージがありますが、実は詩がでてくるのは後漢くらいからだったりします。そんな中で、とりわけ名品とされる古詩十九首&漢代の楽府(民謡)についてです。悲しみの上にわずかに浮かんだ喜びを大切に生きるって大事です。
六朝
六朝前期の詩
六朝前期(わたしの感覚では、三国~南朝の宋くらいまで)の詩についてかいてみました。三国時代の魏では、かなり乱世の不安を感じる詩が多いですが、しだいに東晋あたりから自然描写がふえていきます。
謝朓
六朝のちょうど真ん中くらいの南斉に生きていた謝朓(しゃちょう)についてです。有名な謝霊運とならぶほどの自然描写の名家ですが、じつは役人としての贈答用の詩に名品があったり、民謡ふうの短い作品があったりと、けっこう雰囲気がちがいます。
六朝後期の詩
六朝の後半(たぶん梁~隋くらい)の詩についてです。この時期は、どことなく民謡っぽい作品がたくさんでてきて、しかもするすると流れるようになめらかで、濡れたような艶めきのある風景が詠まれます(実は、中国の文章でもっとも好きな時代だったりします)
五言絶句の魅力
六朝前期あたりの江南で生まれてきた五言絶句についてのお話です。もともと、ちょっとアレすぎる恋愛のことをかいていた五言絶句は、どこかに民謡っぽさと官能性が残っているのがいい作品っぽい気がしています(笑)
七言歌行ってどんな作品?
六朝後半~唐のはじめに大流行していた七言歌行についてです。これはたぶん私独自の考えですが、七言歌行は“漢代の賦のエンディングっぽい形で、漢代の楽府っぽいことをかいているスタイル”みたいに思っています。
江総と薛道衡
六朝末期(陳~隋)の詩人で、わたしがとりわけ好きな江総・薛道衡についての記事です。このふたりの文学性は、ひとことでいうと「あきらめ」なのかなぁ……と思っていて、きらきらとした自然の光とあわせてすごく綺麗でやり切れないです。
六朝駢文 隠れ傑作選
六朝の駢文の中から、わたしが好きな作品をいくつか紹介しています。日本ではほとんど知られていないですが、実は駢文は後漢~隋くらいまであるので、時期によってかなりいろいろな魅力があります。
六朝駢賦 傑作選
六朝時代の賦の中から、わたしが好きなものを選んで紹介しています。たぶんかなり王道の名品ばかりになっているとおもいます。あと、六朝の賦は、そのときに流行っていた詩にすごく似ています。
六朝志怪 道教ふうの民間伝承
六朝期の志怪小説(ふしぎな話の記録集)についてのお話です。高校のときに読んだかもしれないですが「桃花源記」「白水素女」みたいな世界をイメージしてもらえるとちかいです。道教と民間伝承のまざったような感じがかわいいです。
唐代
唐代の詩
唐代の詩についてです。初唐・盛唐・中唐・晩唐の四つにわけて、それぞれの時期の特徴をわたしのイメージでまとめてみました。初期はまだ六朝っぽさがあって、盛唐でいかにも唐詩っぽくなって、中唐で多彩化して、晩唐で耽美に染まっていきます♪
初唐らしさと盛唐らしさ
駢文の最高傑作として有名な「滕王閣序」ですが、初唐(六朝の延長線)と盛唐(いかにも唐らしい味わい)のまざっているような面があるので、ついでにその話もしていきます。すごく雑にいうと、初唐のうねうね、盛唐のどぽどぽです(笑)
王孟韋柳
唐代の詩人のなかでも、とりわけ人気の高い「王維・孟浩然・韋応物・柳宗元」についてになります。自然描写にすぐれた詩人として有名ですが、それぞれけっこう味わいは違うので、それもあわせて解説していきます。
古文と駢文
中国において二大流派とされがちな古文と駢文ですが、実はけっこう混ざりあって育ってきた面があります。ここでは、韓愈・柳宗元の古文復興が、どんなふうに六朝の駢文をとりいれて、より洗練された古文をつくっていったのかを紹介してみました。
二十四詩品
唐のおわり頃に生まれたふしぎな文学理論「二十四詩品」についてのご紹介です。これはなかなか読み方がいろいろあるのですが、私は流れて止まない世界の変化を、どのように描いたり、どんな風景にふくませて描くか――みたいなことかな、と思っています。
宋代
宋代の詩
宋のときの詩について、だいたいの大きい流れをまとめてみました。北宋前半の淡く清らかな耽美、北宋後半のどこか世界についての考察などをふくんだ詩、南宋前半の枯れ葦とすんだ水のような詩、南宋後期の不気味で夢うつつな味わいかなぁ……とおもいます。
宋詞について
宋代に流行った詞についての記事になります。とても抒情的で繊細な作品が多くて、しかも中国でもっとも技巧的に洗練されていたような気もするほどに優雅で美しい世界なので、ぜひ楽しんでみてください。
宋詞の曲って、どんな曲?
詞で歌われていた曲についての記事です。じつは、詞のつくりは曲の盛り上がりにあわせてできていて、盛り上がるところでは印象的な句を入れたり、あえてぼやけさせて余韻を漂わせたり……などがあったのかも、みたいなお話です。
宋詞の曲って、どんな曲?PartⅡ
詞で歌われた曲について、ちょっと変わった曲だったり、もしくは長めの曲についてかいてみました。実は、傑作がたくさん出る曲って、かなり決まっていて、そういう曲は盛り上がる場所がわかりやすいイメージがあります。
蘇軾 妙は変化の中
みんな大好きな北宋の天才文人 蘇軾についてです。わたしは蘇軾の魅力は「雑多さを楽しむ感性」にあるのかなぁ……とおもっています。ひとつの作品の中があまりに雑多すぎて、たくさんの妙所がありすぎる――というのが蘇軾です(笑)
蘇軾 隠れ傑作選
蘇軾の隠れた名品をいつくか選んでのせてみました。おみくじを引いた話、金剛経を唱える人の話、天のすずりの話、夢の中で詩をつくる話など、ちょっと変わったふしぎなものが多いです(私の趣味がそういう系なのですが)
石鐘山記
蘇軾の傑作「石鐘山記」についてです。この作品は、かなり長いのですが、全編面白いので、すべてのせてみました。あと、わたしの思っている蘇軾の魅力について、もっとも本質的な話が書けてすごくうれしいです(笑)
周邦彦 濛々とした春の園
宋代の詞の中でも、もっとも優美にして複雑な作品をのこした周邦彦(しゅうほうげん)についてです。周邦彦の魅力は、とにかく風景描写がうまいことです。文字のもつ印象や、あえての読みづらさなども活かしたスタイルは、本当に優雅で素敵です。
姜夔 ひんやりとした上品さ
南宋の隠れた名品ぞろいの姜夔(きょうき)の記事になります。遠く匂わせたような淡い色あいと、洗練された技巧によって、詩詞ともにハズレなしの作者です。宋代で読んでいて名品の割合が一番多いのはこの人なのでは……とおもっています。
姜夔 隠れ傑作選
姜夔の名品をあえて詩のほうから選んでのせてみました。姜夔の詩は、すごくローカルでマイナーな地方ネタだったり、都の華やかでちょっと頽廃的な風俗をえがいたような感じがすごく楽しいので、かなりおすすめです。
周密 南宋の名評論家
南宋末期の周密というひとについてかいています。周密は、作品もいいのですが、わたしの感覚でいうと、“すごくセンスのいい評論家・研究家”――というイメージです。なので、その鑑賞眼はすごくおしゃれです。
明清
明代の詩文
明代の詩文について、すごく大まかな流れをまとめてみました。明代は、いままでの名品をどのように再現していくか――というのが、大きな関心になっていくのですが、まだ手探りで再現していた感があるけど、その熱気はすごいです。
清代の詩文
清代の詩文について、すごく大まかな流れをまとめてみました。清代は、明のときよりも名品の再現がうまくなっていきますが、しだいに実用的にして不規則な様式になっていきます(この異形的な混ざりあいこそが清らしいとおもいます)
王漁洋の神韻説
清代初期の王漁洋と、その神韻説という理論についてです。詩の味わいは、ほのめかしたような深みによってつくられている――という神韻説と、濡れたような植物のひっそりした作風がすごく好きです。
晩清の怪物 王闓運
清代末期の爛熟した文学界において、とりわけ大きな耀きをみせていた王闓運(おうがいうん)についてです。ごもごもと太く重くねじれた感情が、鬱屈してごぼごぼときらびやかで濁っている……という初めてみると想像もできない美しさが魅力です♪
清詩 隠れ名品選
清代の詩の中から、私が好きなものをいくつか紹介しつつ、清代の詩の魅力は「小さくて多彩な雰囲気を主役にしている」ところなのかも――という話をしていきます。繊細で複雑な味わいのある清代の詩を、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
芸概 中国文学の鑑賞マニュアル
晩清の文学評論の中でも、すごく整えられた理論をもっている劉熙載の『芸概』についてです。とくに「素材になる想いを、どのように書いていくのがいい作品か」ということへの分析は、もはや完璧すぎです……。
白雨斎詞話 詞学の体系化
晩清の文学評論のなかでも、かなり洗練されているものとして『白雨斎詞話』についてです。詞の名品は、かならず重く深く沈んだ気分が、わずかに漏れ出すようにして生まれている――というふうにして、いろいろな作風の魅力をまとめていくのが深いです。
八大山人 深くもつれた泥の中
清の初めごろに生きていた八大山人についてです。この人の魅力は“わかりづらくて妙なねばり気がある”という味わいです。絵・書・詩のすべてにおいて、いくら考えて底がみえない深い泥がたまっているような感じです……。
近代
王国維 ショーペンハウアー的な詞論
王国維は、西洋の文化(ショーペンハウアーの思想)を入れて、詞をつくっていく……という、中国と西洋の折衷がすごく独特です。さらに、その詞論は、いままでの文学評論とはまったく違う方向の深みがあります。
聞一多 干乾びていた古代
西洋の民俗学・神話学などをいれて、中国の古代世界をよみがえらせた聞一多についてです。古代の作品のなかにでてくる神の名だったり、地名だったりが、もはやひとつの詩のような味わいを帯びていく感性が、すごく独特で魅力的です。
日本
浦上玉堂 雲気蒸々
浦上玉堂(日本の江戸時代の画家)についてです。玉堂の魅力は、山水すらもやもやと霧の中にとけていってしまうような、古めかしくてぼんやりとした味わいです。そして、ときどき濛々とあふれる天地にのまれたような気分になれます(笑)
広瀬淡窓
広瀬淡窓(日本の江戸時代の詩人)についての記事です。この人のすごいところは、王孟韋柳の魅力をふくみつつ、さらに詩の様式ごとに似合う雰囲気に少しずつ変えていく――という、すごく複雑な技を入れているところだと思います。
湿気の混ざりあい
私が中国文学をみていて感じるようになった日本語の特徴についてです。日本語って、なんていうか物から漂う雰囲気みたいなのが混ざりあう様子を書いているときに、すごく名品が出ているのかも――という話です(日本の湿気の多い感じがどこか出ているかも笑)
その他
【随時追加】好きな訳まとめ
記事を書いているときにつくった訳で、神憑り的にいいものを選んでみました。正直、こういう訳って、他のときと何がちがうのか全然わからないのですが、我ながらよく思いついたなぁ……というものをまとめています♪
中国の文章の香り
中国文学の魅力(味わい)について、わたしの感じていることをまとめてみました。中国の文章って、それぞれの句で場面が移りかわっていて、句どうしがごてごてぎらぎらと斜めにつながって毒々しく悪趣味に耀いている――みたいな美しさです。
中国の擬態語
中国の擬態語は、互いにどこまでも派生していって、しかも微妙な雰囲気のちがいを、響きや字形などで出しているのが、すごく面白いのです。あと、詩の響きは、かなり擬態語みたいに鑑賞できたりします。
中国の詩の様式
中国の詩の様式として、五言絶句や七言律詩みたいなのは知っている方も多いとおもうので、ここではそれぞれの様式がどのような内容に向いているのかを整理してみました。あと、平仄についても、すごく大まかに解説しています(笑)
対聯
中国の宋~清代にかけてすごく愛されてきた“対聯”についての記事です。対句だけで、物事を広く深く書いていくスタイルは、中国のうつくしい文章の最小単位とでも云えるほど洗練された美意識が詰まっています。
ネットで中国文学を読みたい方へ 「搜韻」を使いこなす♪
ネットで無料で中国文学が読めるサイトとして、「搜韻」はすごくおすすめなのです。まず、辞書機能がすごく充実していて、しかもすごくマイナーな名品もたくさん載っています。ぜひ、ゆるめの作品からのぞいてみてください(笑)
【随時更新】自作の漢詩選
わたしがすごくたまにしか作らない漢詩の中で、それなりに気に入っているものをのせてみました。五言絶句・五言古詩くらいしか作れないので、まぁ素人のお遊びとおもって生温くみていてください……。